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「心配すんな。俺はそれを阻止するために来た」 「じゃあ、助かるんだね」 「まだわからない。でも、そうなるように努力する」  昨日は徹夜だったんだけど、授業中は居眠りしないようにするよ、みたいな言い方だった。 「何で死んじゃうの? 僕が何か悪いことしたの」 「お前は何も悪くない。本来、罪を償うべきはお前の父親だ。あいつには黒い過去がある。因果なんて小学生にはまだ理解しきれないだろ」 「いんが?」  確かに言葉の意味はわからなかったけど、パパを悪く言われるのは納得いかなかった。 「パパは悪いことなんてしないよ。いつも優しいんだから」 「お前に対してはそうかもしれない。だけど、人間は色んな顔を持っている。お前の知らない父親だっているんだよ」 「嘘だ! いい加減なこと言うなよ」 「父親のせいで自分が死ぬことになってもか」  間髪入れずに答えが返ってくる。聞けば聞くほど知らないことが増えていく。あまりの混乱に、僕はだんだん腹が立ってきた。 「だいたい君は誰なの。全部話してよ。僕にも知る権利はあるでしょ」  夜中に叩き起こされて、いきなりもうすぐ死ぬからなんて言われたら、誰だってこうなると思う。 「それじゃ夜が明けちまう。お前は今日、学校に向かう途中で交通事故に遭うんだ。あと数時間後だ」  二度目の宣告は衝撃が少し減った。僕が上目遣いでじっと見ていると、彼がため息をついた。 「…俺は、スイだ」  彼は少しためらったあとに続けた。 「一応、お前の兄貴になる」  驚いたけどすぐにわかった。 パパは僕のママとは再婚だった。前の奥さんとは上手くいかなくて別れてしまったけど、今度はママと生まれてくる僕を大切にすると誓って結婚を決めた。そして、僕の腹違いの兄にあたる人がいるという話も聞いていた。歳は確か一回りくらい違うはずだ。  でも その人が何でここに? 僕より先にスイが口を開いた。 「あまり時間がない。ちょっと体借りるぞ」  スイの話はさっきから質問したくなることばっかりだ。聞くなという方が無理だった。
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