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裏エイプリルフール
俺たちはしこたま酔っていた。
場所は行きつけのバー。
店内には数人の客が残るのみで、彼らは一様にひっそりと飲んでいた。
そんな中で、俺とツレの二人はカウンター席を陣取り、バーテンダーを加えた三人でわいわいと騒いでいる。
定例ともいえる週末の飲み会は、今年で六年目。厳流(いずる)とは高校二年からの付き合いだから、八年間もツルんでいることになる。
厳流は硬派な不良、俺は軟派な常識人。
という性格も好みも違う俺たちだが、なぜか馬が合った。そこそこイケてる見た目のせいか、お互い付き合う相手に不自由したことはないし暇でもないのだが、しょっちゅう二人で会っている。俺なんて、それを理由に振られたこともある。
どうしてそうまでして一緒にいるのか、と聞かれたことも幾度かあるが、そんなことをわざわざ掘り下げて考える必要はない。居心地がいいからツルんでいる。ただそれだけだ。
「そんでさ、かっこいいけどつまんないってフラれてやんだよ、コイツ」
「厳流さん、つまんないんですか?」
バーテンダーに訊かれ、厳流が不貞腐れた。
真っ直ぐに高い鼻の付け根に皺が寄る。俺は少し猫背になった厳流の背中をバシバシと叩いた。
「そんで? 今は上手くいってんだろ? 総務のナントカちゃんと。さすがに学んだんだろ?」
「……」
黙り込んだ横顔を見て、俺は吹き出す。バーテンダーは、あっちゃあという顔を作り、俺の方を向いた。
「悠聖(ゆうせい)さん、笑いすぎっすよ」
「だってさ、これで何人目だよ。コイツってば阿呆みてぇにモテるのに、一年も持たないんだよ?」
「お前だって似たようなもんだろーが」
「俺はもとより割り切って付き合ってるもーん」
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