第一話

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 レッドダイヤモンド商会では主に騎士団が討伐した魔物の鱗や骨、内臓などを取り扱っています。それらは加工されて、騎士や冒険者、労働者用の武器や防具へと生まれ変わります。  お母様も独身の頃は自ら狩りに出かける冒険者だったようで、武勇伝は枚挙にいとまがないそうです。  ――そんなお母様に似たのでしょうか?  わたくしも、ひとりで行動するのがとても好きなのです。  休日のささやかな楽しみといえば、流行のカフェで新作のスイーツを味わうこと。  だから、婚約者と会う時間がない方が気が楽……いえ、ちっとも困らないのです(あら? これでは同じ言い回しのままかしら?)。 「考えたって仕方ありませんわね。どのみちジョシュア様は騎士団のお仕事が忙しいでしょうし。そんなことより」  わたくしはお気に入りの帽子をかぶりました。  姿見の前で一回転すると、同じくお気に入りのワンピースの裾がふわりと揺れます。わたくしの大好きなペールグリーン。 「いつも通り、お休みを満喫するとしましょう♪」 ★ ★ ★ 「んんっ、いちごのみずみずしさはさることながら、カスタードクリームの風味とタルトの焼き具合も最高ですね!」  どうして美味しいものを食べると、足がじたばたしてしまうんでしょう。  淑女らしからぬ仕草にはなりますが、テーブルの下で誰にも見られていないので、問題はありません。
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