第一話

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 雲ひとつない快晴です。  お気に入りのカフェのテラス席は川沿い。  穏やかに流れる川面は、陽の光を受けてまるで宝石のようにきらきらと煌めいています。  風も爽やか。  ひとりで過ごす時間は、本当に気楽です。  友人とのお茶も楽しいですが、自分のペースで好きなものを食べられるというのもまた、幸せなのです。  もちろん、護衛の方が遠くから監視してくださっています。  わたくしが自由に過ごせるのは彼らのおかげ。いつも感謝しています。  続いて紅茶も堪能していると、チーフパティシエがわたくしの席に近づいてきて、恭しく頭を下げてきました。 「スタンホープ伯爵令嬢様、いつもありがとうございます」 「とんでもないですわ。こちらこそ、いつも美味しいものをありがとうございます」  わたくしは満面の笑みで答えます。  すると、パティシエも表情を緩めました。 「新作のいちごタルトでございますが、隠し味にお気づきでしょうか」 「もしかして、カスタードクリームが卵黄ではなく全卵で作られているのかしら?」 「よくぞお気づきで! 流石でございます。卵黄のみで作るカスタードは濃厚ですが、――」  パティシエによる新作タルトのこだわりを、ふんふんと頷きながら聞きます。  うんちくを教えてもらうのも楽しみのひとつです。  テラス席はほとんどがカップルで埋まっています。
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