1人が本棚に入れています
本棚に追加
「堕天使」と呼ばれる所以
彼女は転校生で今年の春、この学校に来た。
もちろん、そんなに整った顔をしているから全男子は興奮し、女子も興味を持っていた。
ほとんどの男子が一目惚れをし、その子が席に着いた瞬間、人気なアイドルの握手会並の人が群がった。
彼女は綺麗な白い髪を耳にかけ、微笑みながら一つ一つの質問に丁寧に答えていった。
「私は、天野アリサと
言います」
最初に聞かれた質問に答えると、日本ではあまり聞かない名前だったからか周りの人たち全員驚いた。
「どこから来たの?」という質問に
彼女は
「カナダから来ました」と流暢な日本語で話した。
その後もたくさんの質問を投げかけられたが、アリサは笑顔で答えて
いった。
そのおかげでアリサは質問した人や近くにいた人達から「すごく綺麗で優しくて良い子」という印象を持たれていた。
実際、僕もそう思っていた。
教室の端で本を読むふりをしながらチラチラとバレないように見ていた僕に
アリサは気がついて、優しいけれど少し困ったような笑顔を向けてくれた。
話しかけに行けない意気地なしの僕に。
しかし、悲劇は突然だった。
アリサが来て少し経った後、同じクラスの坂口美波が
アリサに似た真っ白な髪で登校してきた。
話によるとその前日、アリサと美波、それに同じクラスの女子で遊びに行ったという。
美波は教室に入ると突如、嗚咽をあげて泣き出した。
最初はその染めたであろう髪色が色んな人に見られてびっくりしたのかと
軽い気持ちで彼女を横目で見ていた。
その気持ちは一瞬で裏切られた。
「あいつが」
一言目はそれだった。普段、口調から優しさが滲み出ている美波が言うような言葉ではなくてクラス全員が彼女を見ていた。
「あいつに触れたらこうなった」
そう言って指をさしたのは自分の髪だった。
最初のコメントを投稿しよう!