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転機
そんな声で、のこのこ帰れると思っているのだろうか。
「僕は違うって信じてる。ごめん、何もできなくて」
そうだ、気づいているのなら何かしてあげれば良かったんだ。
でも何で僕がそこまでしないといけないんだと薄情な自分が訴えていた。
「ありがとう、でも、私は大丈夫」
まるで自己犠牲の魂だ。
そんな人が、いちゃいけない。
しかも、こんなにも良い子で純粋な子が。
「僕と、噂を無くしませんか」
気付けばそう聞いていた。
「え?」
そんなことを言われると思っていなかったのだろう。
意味が分からないといったような顔をしていた。
「約一ヶ月にこの学校で生徒会選挙があります。そこで噂は違う、そう訴えましょう」
でも、証拠は…?と、不安そうに少し背の高い僕のほうを見上げてきた。
「僕がこんなに近くで話しているのに、まだ噂なんか気にしてるんですか。美波の話ならもう、僕の中では解決しています」
「どういうこと?」
普通に考えれば分かることだ。
それも端から見てたら余計に。
「嫉妬ですよ」
「えっ?」
美波はアリサが来るまでクラスのマドンナだった。
「貴方が、この学校に転校してきて、色んな人の視線や注目を浴び、今まで自分を語ってくれた人が、自分を構ってくれない…そんな状況に納得できないから、取り巻きを使って噂を広げたんです」
思わず一息で言ってしまってから気づいた。
…噂を色んな人に伝えたのは全て取り巻きで、信じていない人が比較的多い、と。
でもこんなに大きなことをした美波達に目をつけられるのが怖くて皆黙っているんだ。
「皆」が悪いんじゃない。
悪いのはただ一人だったんだ。
「美波を倒そう」
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