転機

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そういった瞬間、彼女の顔が明らかに曇った。 「そんなことしたら、美波ちゃんが…」 まだ人の心配をしているそうだ。 「でも、噂を無くしてまた皆と過ごしたいんでしょう?」 「それはそうだけど…」 と、言葉を濁らせながら眉を 顰めていた。 「協力者がいます。その人に頼んでみましょう」 協力者?と、不思議そうな表情をしたアリサに驚きの事実を伝える。 この手を使うのは本当は嫌だ。 「僕の兄です」 そう、兄はここの学校の生徒会長であり、皆から慕われるリーダーだ。 …しかも、美波の想い人でもある。 美波は僕が噂を信じていると信じ切っている。 だから、僕に何か脅したりすることもなかった。 今回の彼女の敗因はそれだ。 「僕の兄は、生徒会長です。 彼の権力と支持力を使って噂を塗り替えましょう」 美波だって、汚い方法だった。 それなら、僕達だって使ってもいいだろう。 「でも…もし失敗したら?」 「その時はその時です」 少し口角を上げてそう答えた。 久しぶりに面白いことをできる気がする。 「そう…。それでもやっぱり…本当に良いの?」 「男に二言はありません」 珍しくはっきりとそう答えると、アリサは笑った。 作り笑いでもない、心の底から笑っている顔だった。 …やっと、笑ってくれた。 心の中でそう思っている僕がいた。
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