4人が本棚に入れています
本棚に追加
暗殺者【5分】ヒューマン
私は、世界最高の殺し屋だ。
その為、私は他の殺し屋が掟を破った際の粛清をする仕事も請け負っている。
しかし、ここで疑問が生じる。
もし私が、掟を破った際は誰が私を粛清するのか……
そう、その為に私は弟子を一人育てている。
私は、暗殺者の教育係としても優秀な為に弟子には世界最高峰の技術を学ばせている。
私がフクロウと呼ばれている事もあり。ベニヒワと付けた赤髪の少女は、控えめに言っても覚えが悪い。
私は、すでに数人の弟子を育てているが、その誰もが優秀であった。
一人は、その実力が買われて独り立ちすると、立派な暗殺者となって行った。
一人は、戦地の任務の際に戦争に心を痛めると戦争を終結させると言い戦地に残った。
そして、沢山いる弟子の中で——ある者は私が持つ最強の称号を手に入れる為に私に挑む者も居たが……
その誰もが、私には遠く及ばない。
だから、私は新たな弟子を取った。
それが、このベニヒワという訳だが……この子は、どうにも使い道が無い。
女を武器に暗殺をさせ様にも、まだ十歳の子供の為に、その方法は使えない。
まぁ、子供好きの変態は居るが壊されてしまう為に一度きりの使い捨てになってしまう。
それでも別に構いやしないが、今は——そういった依頼がない為に、もう少し長い目で見て育てる事にした。
そして、私はベニヒワが作った朝食を食べながら……
「ヒナ、今宵は仕事が有ります。準備しといてください」
「はい、分かりました。先生」
私は、彼女にベニヒワと名付けわしたが……まだまだ半人前の為に雛鳥にかけて、ヒナと呼んでいる。
そして、ヒナは私の事を先生と呼ぶ。
そんな私達は、今宵任務に出かける。
*
*
*
「さて、どうしたものですかね……」
私は、任務を終えて屋敷から脱出する際にヒナとはぐれてしまった。
まぁ、暗殺協会からは任務の際は囮に使っても良いと言われてはいるし。
居なくなれば、新しい者が補充されるだけ。
私が、そんな事を考えていると——血だらけのヒナが戻って来た。
「大丈夫ですか?」
「はい……」
ヒナが、そう答えたので——私達は、その場を後にするとアジトへと帰った。
アジトへ戻った私は、ヒナの怪我を見てみると、ヒナはどこも怪我していなかった。
すると、ヒナは——この血は敵を倒した際の返り血だと説明をしてくれた。
私は、一瞬——どれだけの人を殺せばこれだけの返り血を浴びるのかと思ったが……未熟な彼女であれば、一人二人殺しただけでも——このくらいの返り血を浴びるであろうと納得した。
それから数年間ともに過ごすと、ヒナな少しずつ少女から女性になって来ていた。
そんな、ある日。私はヒナから相談を受けた。
ヒナの話によると、最強である私を危険視した協会が殺し屋を総動員して暗殺計画を目論んでいるとの情報であった。
そして、その作戦の中心はヒナという事であった。
私はヒナ対して
「しっかりと殺しに来なさい」と、そう告げた。
しかし、ヒナは——それを断った。
「私は、先生に死んで欲しくありません」
「私も、そう簡単には死にませんよ」
そうは言ったが、実際は——教え子も含めて手だれの暗殺者を複数相手にするのは、いくら私でも分が悪るい。(生き残る確率は五分五分と言った所でしょうか……)
そんな危ない橋にヒナを巻き込んでしまっては……
私がそう思っていると、彼女は強い意志で
「先生の事は、私が守ります」そう告げてくる。
「あなたに守られるほど、衰えてはいませんよ」
「では、生き残ったら暗殺者を辞めて普通の暮らしをしましょう。
私、先生のご飯を毎日作りますから」
「それでは、今と何も変わっては無いではないですか」
二人は、顔を見合わせて笑い合うと
「それも良いかも知れませんね……」
それから私達は、生き残った先の事を約束すると——暗殺協会との全面戦争の為の準備を整えた。
「このアジトは、囮として爆発させます。
その後は、プラン通りにお願いしましす」
「はい、先生」
そして、私達はアジトの爆発音とともに行動を開始した。
私は、追っ手を殺しながら逃げている途中で、後悔をしていた。
それは、この戦いにヒナを巻き込んでしまった事……
私は、人を殺す際に何も感じる事は無かったが……
ここ最近は、彼女とヒナと居ると少し変な気持ちが芽生えている事が分かった。
「あぁ、昔の人は良く言ったものだ。
出来の悪い子ほど可愛いと……」
それから行く人もの追っ手を殺し——数時間が経った頃……
「はぁ……はぁ……ヒナは、無事でしょうか……」
私は、ヒナの心配をしていた。
実際、ヒナから話を聞かされた時の私は、今回の作戦に生き残る為の打算はあった。が……
蓋を開けてみると、協会は私にどうしても死んで欲しいらしい。
その為、私の想定していた倍以上の殺し屋が動員されていた。
その為、私の体力はとうに限界を迎えていた。
しかし、そんな時に暗殺者達に囲まれた倉庫を発見した。
すると、中からマシンガンを連射する音が聞こえると私の体は勝手に動き出した。
「ひな……」
*
それからヒナを助ける為に倉庫に突入した私は、敵に囲まれ左手を負傷すると追い詰められていた。
「ぁぁ……しくじった……」
そう、ヒナが居ると思って飛び込んだが倉庫の中にはヒナは居なく。
私を見つけられない暗殺者が集まると、苛立ちからマシンガンを連射していただけてあった。
何故!? 私は確認もせずに飛び込んでしまったのだろう……
私は、自分の行動が腑に落ちなかったが——そんな事を考えてる暇を敵は与えてくれなかった。
そして、追い込まれた私は死を悟った。
「……ぁぁ……左腕の感覚がない」
毒でも塗られていたのか……左手は、もう腐って動かなくなっていた。
私が死んだらヒナは、どうなるのだろう。出来れば生き残り普通に生きて欲しいと願うが……
しかし、それは簡単な事ではないだろう。
きっと協会は裏切ったヒナを許さない。
だから、ヒナを助ける道は——ここに居る全ての暗殺者を殺し協会を潰す事だけ。
ならば……
覚悟を決めた私は、暗殺者とは思えない行動をとる。
それは、敵に姿を現し正面からぶつかるという選択……
すると、大勢いた暗殺者達は私に襲いかかって来た。
私は、残った右腕と口を使い。銃とナイフを器用に使い敵を屠る。
私を狙い肩や腹部を貫通する銃弾などは気にしない。
死を覚悟した特攻である。
*
それから何人……何十人——殺したのだろう。
私の体は、とうとう動かなくなっていた。
痛みは全くない。それより心地い良い睡魔が襲ってくる。
しかし、私は目を瞑る事はない。
私は、私を殺す。その人を……最後に目に焼き付けようと必死に睡魔と戦った。
そして、静かな世界の中……私の前に現れたのはヒナであった。
敵の返り血で全身真っ赤に染まるヒナを見て、少女だったあの日のヒナを思い出す。
ひな……お前は、あの時も……
「大丈夫ですか——ッ。先生、安心してください。敵は全て殺しました」
その言葉を聞いて、私は気を失った。
*
それから私が目を覚ました時には、腐った左腕はヒナが切り落としたらしく無くなっており。
私は、暗殺者として生きていく事は不可能となった。
それから部屋を出た私の目に入って来たものはキラキラと光る海。
そこは、海岸沿いの見晴らしがいい丘にポツンと一軒家が立っているだけの場所だった。
「先生ーーッ。目を覚ましたのですね」
そう笑顔で走ってくるヒナは、幼く見えたが……あの時の見たヒナは紛れまくなく。成長である。真っ赤なベニヒワに見えた。
*
*
*
それから、暗殺者を辞めた私達は海の見える丘でゆっくりと暮らす事にした。
私が、そこで椅子に揺られ……うたた寝をしていると
「先生——。お昼ご飯が出来ましたよ」
私は、そんな声に起こされると
「ぁぁ……ベニヒワいずれ君が私の元から巣出す時を楽しみにしているよ」
「寝ぼけているのですか? 先生」
最初のコメントを投稿しよう!