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それから3日後。
私は学校が終わるとまっすぐアパートへと帰ってポストを確認する。
ポストには紙切れが入っていた。
<公園 午後9時 レベル1 女 前回遺体は無し 何故>
いつもの暗殺指令書。気になったのが、後半の文章だ。何故と問われても、
「知るかバーカ」
と言った感じだ。きちんと私の瞳が、対象の心臓の明滅が完全に消え去るのを視たから確実に死んでいる。それはそちらの不手際だろう。
制服を脱いで、除菌スプレーをかけてタンスにしまう。
普段着に着替え、ソファにもたれかかって、煙草を吸う。
ついでに暗殺指令書はライターで燃やして、灰皿へと捨てた。
私に帰り途中に誰かとどこかに寄るような、友達らしい友達はいない。レベル1になる前から、けん制しあうカースト制度、クラスメイトの張り付いた笑顔、調子合せの流行、SNS、ついでに鬱屈とした社会に閉口していた。
それに加えて、学校では煙草を吸えないし、煙草の臭いを制服につけるのも躊躇われたため、朝は禁煙しているから、登校直後にはすでにニコチン切れもあって、愛想も悪くなっていた。なので、入学してから1カ月後には私に話しかけようとする人はいなくなった。それからかれこれ1年強たつ。クラスメイトからはヤのつく職業の娘だとか、カラーギャングの彼氏がいるとか、言われたい放題だった。レベル1になって眼帯をつけるようになってから、噂のバリエーションはさらに増加した。虐待家庭だとか、暴力沙汰があったとか。
自分からあえて否定することはしなかった。実際、そういった陰口、噂話のお陰で、カースト以下略からは完全に離れた学校生活を送っていられた。必要最低限の発話で生活できていた。グループ学習は私がなくても進むし、体育の授業は少しだけ困るが、はぐれ者とうまくやっていた。
私にとって学校は勉学を学ぶ以上に意味を見出せなかった。私の母と親交のある煙草屋が内緒で買わせてくれている煙草を吸う場所と、1人になれる場所さえあればそれでよかった。
ご飯の時間になって、冷蔵庫からプラスチックの食品保存容器を取り出す。母の知人の大家さんが、作りすぎたと用意してくれたものだ。きっとそれは嘘で、私の食生活を心配して頻繁に用意してくれているのだ。今回の中身はカレーで、何食分かにわかれて詰められていた。インスタントご飯をレンジで温めて、別皿にカレーとともに添えて、ありがたくいただく。きっとこれがなければ私はコンビニエンスストアの弁当かスーパーの総菜かファストフードで生活していただろう。
ご飯を食べ終わり、皿を洗って、煙草を吸う。カレーと煙草は最高の組み合わせだよな、と思うのもつかの間、炭水化物が脳の血糖値を上げたおかげか眠くなってきた。夜までやることがないので、夜に備えて少しだけ眠ることにした。
そして8時にアラームが鳴って、起きる。いつもの黒装束に身を包んで、煙草に火をつけてヘッドフォンを被ってブーツを履いてポケットに護身用のナイフを入れて――いつもどおり外に出た。
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