きらめく夜の中で

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彼に初めて会ったのは、甘い香りのする幻想的な夜だった。 夜の闇に浮かぶクリーム色に3本線の入ったジャージ姿の涼やかな目をした男の子 私より頭一つ高い背 骨ばった細い身体 街灯に照らされてキラキラ光る黒い髪や瞳に私は心を撃ち抜かれていた。 けれど、その心の内を表さぬように 私はわざとおとなしい人のように演じた。 そして門の前で出くわした私を妹の代わりに駅まで送ってくれる親切な彼に心を躍らせた。 昼間に道ですれ違うだけなら おそらく目にも止めなかったであろう彼に 今こんなにも惹かれているのは、 きっとこの所々に漂う金木犀の甘い香りと日常を隠した夜のせいだろう、と考えるようにした。 光を失い視界が狭まった夜の合間に音が大きく響いていた 私達の靴音 自動車やバイクが走り去る音 家の窓から聞こえる皿を洗う音 母親と話す子供の声 テレビの放送音 街が、生き物が鳴らす音がそれぞれに主張していた。 今はすれ違う車のサーチライトに映る彼の姿をみてときめいていても 駅舎に着いて 煌々と何一つ隠すことない青白い光に照らされた彼の姿を見たら 私はきっと冷めてしまうに違いない そう思っていても今は、 この時間は私にとっては夢のようだった。 一つ、二つと途切れ途切れ話しながら 時々正面に向いていた体を相手に傾けて 目を合わせる度に湧き上がる喜びに彼は気づいているだろうか。 道に咲く金木犀が夜になるとこんなにも甘いなんて今まで気が付かなかった。 もうすぐ駅に着いてしまう。 蛍光灯の白い光が駅の構内を写し出している。 もうすぐ私のこの気持ちはたちどころに消えてしまうのだろうか そして彼も夜の魔法がとかれて 時間の流れと共に私を忘れて行くのだろうか けれど今、私の心臓はどくんどくんと体内に響き渡り 容易に声も出せない程、喉は渇ききっていた 駅舎に入ったその時だった 『何か飲まない?』 『…うん』 顔を上げた私を 面白そうに眺めた後 彼は私の手を取って歩き始めた。 休憩室にある自動販売機の前のベンチに私を座らせてポケットから財布を取り出すと『何を飲む?』と私にきいた。 私がアイスミルクティーと答えるとを選ぶと彼はそれとコーラのボタンを押した。 がこんっと音がなって彼が飲み物を取り出した。 私は…やっぱり変わらず彼に惹かれていた。 まだ夢は覚めない 『このミルクティー…』 彼が手に持った缶のミルクティーをみた。 『天使の絵が描いてある…まるで君みたいだって言ったらおかしいよね、でも君の鞄には天使の羽の形のキーホルダーがついているから…なんて今日はなんか変だ』 私に缶を手渡しながら彼の困ったように微笑む姿をみて 私は恋に落ちた
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