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探しに来たよ
2回目の対面の時、彼は来なかった。さっそくバックレである。
僕はなんだかそうなるような気がしていて驚きも焦りもしなかった。
次の日彼方くんの高校に向かった。授業が終わり帰るタイミングを狙ったのに、彼方くんは一向に学校から出てこない。
許可を貰って校舎の中を探させてもらうことにした。
「やっとみつけた。」
僕の声に金色の髪が振り向く。
夕日の射す教室で1人机に向かう姿は僕だけが見るにはもったいないくらいの綺麗な絵面だった。
「勉強してるの?」
意外だった。クラスの中心に居て女の子からもさぞモテるだろうに。1人で放課後で勉強するタイプには見えない。
「…はあ」
この人誰だっけ。と目が語っている。
登場人物がさぞ多いこの子の人生の中では僕なんてどこにでもいる1人なんだろう。そして僕に興味も無かったんだろう。
「大学のゼミの研究の…」
そこまで言うと思い出したように「あぁ」と呟いた。
「あの怪しいやつ。」
「怪しくないよ!」
と言いつつ僕は笑ってしまう。確かに、僕だってこの教授何がしたいんだとは思っているところもあるけれど。
「何か用だったの?」
面倒くさくなったのか、勉強を邪魔されたからなのか不機嫌そうなタメ口で聞いてきた。
「いや、昨日面談の日だったでしょ。来なかったから…」
はいはい、と思い出したように頷く。
「そうだったね。でもあんたがその研究興味無さそうだったから。」
あ、ばれてた。
「俺自身には興味あったっぽいけど。」
そう言うとハッとするくらいの綺麗な笑みを浮かべる。
「…だってすごい綺麗な子だったから…」
「あはは、めっちゃ正直。」
綺麗な笑みをさっと隠すと今度は憂いを帯びた表情を浮かべた。
「俺の取り柄そのくらいしかないしね。」
「え?」
つい聞き返すと、彼方くんはもう机のノートに顔を戻していた。
そのノートには英語の問題が連なっている。
「英語の勉強してるんだ。よかったら僕教えられるよ。」
「え?」
希望を浮かべた目で彼方くんは顔を上げる。
「英語だけは得意でね、大学でも留学生の生活補助とかしてるから。」
進んでやりたいと言ったわけじゃないけど、授業を取っている教授に任されてしまったのだ。それでも彼方くんからしたら教えて貰うに丁度いいと思ったのだろう。
「じゃあここ教えて」
と手招きされた。
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