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ゼミ
大学3年生の僕、中瀬恋叶(なかせれんと)は、ゼミの研究テーマに困らされていた。
社会学という柔軟で幅が広すぎる学問で、熱血なこの教授のゼミを選んだのは間違いだったに違いない。
「先生のツテのある学校の、高校生のキャリアデザインのサポートをしてもらいます。」
教授はキャリアコンサルタントの会社を起業しているようで、それの延長線上の手伝いを研究として学生にやらせるらしい。
どうやら教授は、高校生向けのキャリアコンサルタントの会社を新たに起業しようか模索中のようだ。この研究テーマは自分の会社にとっても一石二鳥ということだろう。
「恋叶くんどの子にするか決めたー?」
声をかけてきたのは同じゼミの浅風徹(あさかぜとおる)である。
「どの子って?」
「先生の話聞いてなかった?サポートする高校生は1人で、俺たちが自分で選べるらしいよ。」
ほら。そう言って僕の目の前に出した紙には高校生1人ずつのプロフィールが載っている。
「すごい個人情報じゃんね…いいのかなこれ。」
「どうなんだろうね。先生もこの研究、私利私欲入りすぎだし。」
就職活動のため、将来のため、と名目は教授が連ねているがすべて教授自身のためという目論見はすでに学生全員に見抜かれている。
「そもそもこの経験が役に立つから受けてみればっていうキャリアコンサルタント資格も養成校通わなきゃ行けないし、全部含めてお金40万くらいかかるらしい。そんなん受けられるわけないじゃんね。」
就職活動に有利という理由だけで受けようと思う資格ではない。
「てか、恋叶くん始めて話したけどやっぱ派手だねーその髪。おもしろーい。」
あははと言って指さす僕の髪はピンク色。
「名前も恋って入っててピンク髪なのはアニメキャラっぽすぎるでしょ!」
実はそれを狙っている。
東京でガールズバー等の女の子の仲介業者の仕事をする兄と違って僕は人と関わるのが嫌いな根暗なオタクだった。
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