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聞いて欲しい
そちらには高校生の将来への考えについてのアンケート結果が書かれている。
しかし彼方くんのアンケートは真っ白だった。
「…まあいいんだけどね。」
だから教室で英語を教えた時、留学したいと聞いた時は驚いたのだ。
「彼方くんこれさ…」
「ねえ、」
僕の言葉を遮って彼方くんが顔を上げる。
「俺の事大事に思ってるってほんと?」
「え?うん。」
「…そっか。」
ストレートに何の躊躇いもなく答えた僕の言葉に彼方くんの表情がふわりと和らぐ。
ふふ。とくすぐったそうに笑う。
「すごいねなんか。まだ会ったばっかなのにさ。」
「…そうだね。」
そういえばまだ彼方くんに僕の役目をもっと詳しく話していなかったなと思った。
「僕たちの研究してるこのキャリアコンサルタントっていうのはさ、人に何の仕事向いてるとかどんなことがいいんじゃないかとか相談のったりするお仕事なんだよね。」
「…うん」
「とくに僕たちは高校生向けっていうのをやっててさ、まだ自分のこと自分で見れない子ども達の未来を1人ずつ寄り添って一緒に考えるってことをしてるんだよ。」
言いながら自分でもやる気がないことだったのに、その責任の重大さに気がついた。
「…つまりさ僕はきみの未来に責任もってきみと関わってるんだ。」
「…?」
「きみが人生を歩む上で悩む時、どっちに進もうかなって思う時その時僕の影がちらつくようになるかもしれないから。」
「君の人生に、未来に、責任持ちたいって思ってる」
そうあるべきなんだ。心の中でもう1人の自分がそう言った。
分かって貰えたのか分かってもらえていないのか曖昧な話をした面会の次に彼方くんに会ったのは、予想外の場所だった。
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