おかしい

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おかしい

「え!?彼方くん?」 見慣れた金色の髪がなびく。 「…誰ですか?」 答えたのは腕を組んでいた隣の女の人だった。 咄嗟になんとなくその人に違和感を覚える。 彼女さん?それにしては歳が離れているような。 「…恋叶さん」 名前を呼ばれた瞬間、彼方くんの腕を掴み引き寄せていた。 彼方くんは苦しそうな今にも泣き出してしまいそうな表情をしていた。 どうしたの?そう理由を聞く前に違和感の正体に気がついた。 正面から女の人の顔を見ると雰囲気、特に目元がよく似ている。 「こんにちは。…お母さまですか?」 希望に反してその顔が1回縦に頷いた。 異様だ。 親子の距離感じゃない。僕が声をかけたその時、2人の顔のシルエットは今にも重なりそうだったから。 そしてここはホテル街だ。 バイト帰り近道だからとここを通って良かったと思った。 「はじめまして。中瀬恋叶と言います。彼方くんとは、大学のゼミの研究の関係で会ったんですけど…その、今日は?」 はなから答えてもらう気のない質問をした。 怪しんでいる僕の目に怯えるように彼女の目が泳ぐ。 「えっと、その…」 いろいろ聞きたいことが頭に溢れたけど、今は泣きそうなこの子を母親から離すことが先だと思った。 「この後、彼方くん面談の予定あるんです。すみませんお借りしますね。」 そう言って彼方くんの腕を強く引き、母親に背を向けて歩いた。
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