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「武蘭、今日はマッチョだね」
幼馴染の歩瑠夏が、自宅から出てすぐに俺のわずかな異変に気がついた。
ツインテールの髪を揺らし、大きな目、白い肌、血色の良い頬と唇。
紺のブレザーの下になびくひだスカートは、他の女子高生より少し長め。
愛らしい笑顔の歩瑠夏はいつも通りだ。
「あぁ、今日の体育はバスケだからな。って、そんなにわかるか?」
俺は制服のジャケットの上から自分の身体をペタペタ触る。
制服でわかるぐらいなら体操着では一目瞭然という事になる。
「ん〜、いや、どうだろう。後ろから見て、なんとなくそんな気がしたから」
前に回り込んだ歩瑠夏が真剣な顔つきで俺の身体を上から下まで舐めるように眺めるので、ちょっと恥ずかしくなってきた。
「歩瑠夏ぐらいだよ、俺の姿を見ただけで変化に気がつくのは。ほら、行くぞ」
俺は照れ隠しに早歩きで駅へ向かう。
「わからないよ〜。体育の小林先生が武蘭をお気に入りだったらバレちゃうかもよ」
俺を追いかけながらクスクス笑う歩瑠夏。
俺は歩瑠夏の方を振り返り、悩まし気なポーズをとった。
「あぁ、そういえば……俺を見る目がちょっと違うと思っていたんだ」
「えぇっ!?本当に?」
「んなわけねーよ」
俺の迫真の演技に騙されたのか、歩瑠夏は本気で驚いたようだ。
ちなみに当然小林先生の熱い視線は嘘である。その小林先生は50歳男性と知らされているが、本当のところは生徒にはわからない。
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