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ケラケラ笑い合う二人。
俺、川上武蘭と隣を歩く山下歩瑠夏は小学校からの腐れ縁で、同じ高校へ通っている。家も近所で、歩瑠夏の母親から「歩瑠夏のことよろしくね」と小学生の時にお願いされて以来、ずっと当たり前のように一緒に登下校している。
「でも首のレベルライン、薄っすら見えているから気をつけて」と、歩瑠夏は自分の鎖骨の上あたりの真っ白な肌を指差した。
「マジ?目立つ?筋力増加、5%にとどめたけどな」と俺は片手で隠すように自身の首を触る。
これがバレたらそれこそ小林先生から大目玉を食らい、今期の体育の成績が危うくなる。
しかし、今日だけは筋力増加に頼りたい。
多少のリスクを冒してでも、今日の体育には気合が入っている俺だった。
「あ、最新の『アイ・Bスーツ』の広告だ」
歩瑠夏が歩みを止めた。
駅ビルの壁一面の液晶パネルに表示された、エキゾチックな美女の映像。
浅黒い肌に真っ白のシンプルなドレスで均衡のとれたボディを見事に表現し、緑色の目の周りに施された色使いが妖艶さを助長させている。肘の辺りから爪先まで施された孔雀の羽の柄は、本物を貼り付けているようにリアルだ。
形が良く大きな唇。美女の首には、黒いチョーカーのような太いラインがくっきりと入っている。
「キレイ…。これ、T3社のでしょう。やっぱりT3社の『アイ・Bスーツ』の性能が一番良いわよね。憧れだなぁ…」
歩瑠夏はその広告の映像をうっとり眺める。
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