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「歩瑠夏、23歳の誕生日おめでとう。
聞いてくれよ。俺さ、バスケのロングシュート100本連続達成したんだぜ。これが成功したら、歩瑠夏が目覚めてくれるって願掛けしてさ。もちろん『アイ・Bスーツ』の強化はしていないぞ。そんなことしたら、歩瑠夏に嫌われちまうからな。
……歩瑠夏、聞こえているんだろ?目を覚ましてくれよ。またその笑顔を見せてくれよ…」
うん、武蘭。聞こえているよ。
武蘭は私が寂しくないようにって毎日電話をくれていたけど、やっぱり武蘭の声を直に聞ける方が嬉しいな。
脳波を感知して通話状態にする、ジャイナ社特製イヤーカフ型携帯電話。
脳が活動状態の時だけ通話が出来るから、武蘭は「これがあるから少し安心する」って言っていたわよね。
通話が出来るという事は、私の脳はまだ生きているという証拠だものね。
もう私、23歳かぁ。
例え目を覚ますことが出来なくても、もう少し…せめて30…25歳までは生きていたい。
動くことも話すことも出来ないけど、武蘭の声を聞いて「私はまだ生きている」って実感していたい。
もしも願いが叶うなら、目を開けて武蘭の姿を見たい。笑顔が見たい。大人になった武蘭を一度でいいから見てみたい。
そしてちゃんと自分で武蘭に「大好き」って伝えたい。
……そうしたらもう、充分だから。
高校で学年1位を獲れたら…、希望する大学に現役合格出来たら…、ジャイナ社の公募で賞が獲れたら……。
武蘭がいっぱい願掛けして頑張ってくれたのに、なかなか目覚めなくてごめんね。
ーーー武蘭の人生を独り占めしてごめんね。
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