ニセモノの空が教えてくれたこと

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 あたし、花村アリスは9歳。学校よりも自宅よりも病院生活が長い。つまりぼっちの暇人。でも、そんなあたしにも一人、大切な友達がいる。名前は(かける)、同い年。天使と同じくいたずら好きだけど、翔のいたずらは天使のいたずらの域を超えて悪魔の申し子と言われている。でも、天使でなくても翔と出会ったおかげであたしの人生はずっとわくわくするものになった。  翔はあたしと違って病気ではない。翔のお母さんがこの病院の看護師で、小さい頃からここの職員専用の託児所に預けられて育ち、そして小学生になった今は放課後をこの病院で過ごしている。  入院患者とスタッフの子ども、普通なら出会うことはない。けれど、ルールというルール全て破る翔はある時、託児室を脱走した。病院中逃げ回りたどり着いたあたしの病室で、あろうことか勝手に布団に入ってきたのだ。  「しー!見つかるだろ?」 びっくりしているあたしに、当時5歳の翔はそう言い、一緒に布団に隠れるようにあたしの頭にも布団をかけた。布団の暗がりの中で目だけがきらきら輝いていた。こうしてあたしは翔と出会ったのだ。
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