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最後はぜいぜい息を切らしながら引きずるように段ボールをドアの前に置き、ノックと同時にドアを開ける。
「た。?」
と。
そこは、どう見ても控室なんかじゃなく。
「……んっ、あ、あ、っ」
「おら、後ろだけでイけんだろ、……らっ」
「あ、んっ!!」
男性専用お手洗い。
そして、何やら若干の刺激臭がして、瞬眉を顰めた藍人の目の前には。
つるつるの尻、と、白濁、と、揺れる雄の逸物と、つるつるの尻に出入りするすっごい質量のKEN-Jの逸物。
と、
「あ、……あ――っ……!!」
悲鳴のような、男の嬌声。
「……あ?お前も混ざりたい?」
と、肉食獣のようなKEN-Jの視線と、舌なめずり。
やばい。こいつ、完全にイッてる。
「いや、結構です。失礼しました」
バタン。
回れ右。
とりあえずダッシュ!!
言われた通りに置いてきた!
文句は受け付けないからな!!
「あー、悪い悪い、青いプレートの方だったー……って、」
藍人が地上に上がって息を切らしていると、先ほど酒を運べと言ってきた筋肉マンがこちらを向いていた。
「もう持ってった?」
こくこく、こく!
「あー、悪かったな。ヤってた?」
こくこく、こく!!
「あー、忘れろ忘れろ。イベント前はな、いっつもだからあの人」
ガハハ、と笑いながら彼は荷物を担いで行ってしまった。
全く悪気はないのだろうが、
(とんでもないもん見せられ……)
「う、ぷ」
(え?)
急に吐き気がして、体の芯が燃えるように熱くなり、膝から力が抜けた藍人はその場に崩れ落ちた。
(何だ?)
ぞ、と背中の中心を何か冷たいものが走り抜け、一気に体全体に熱が広がり始めた。
ふわ、と藍人の首筋から甘い香りが香り立つ。
(何で?Heat?)
体を支えようと力を入れてもがくがくと腕が震えて立ち上がれない。
「おい、大丈……、やべえこいつ!」
近づいてきた誰かが藍人を助け上げようとして咄嗟に後ろに避けた。
「何だよ」
「どうした?」
「こいつ、オメ――……」
「はいはい、暑くてくたばっちゃったかー」
『こいつ、Ωだ』と藍人の二次性を暴露しかけたスタッフは、
「センシティブな内容には最新の注意を払え、と小学校で習ったよな?」
思いがけずその人物に鋭く睨みつけられて言葉を飲み込んだ。
ふわ、と冷たい何かで覆われると、自力で動けなくなっている藍人の体が浮き上がった。
「う……」
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