【一寸先は】2.減るもんじゃ、ないって!?

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 自分を抱え上げたのは、おそらくαだ。びく、と体が反応し、一気にフェロモンが流れ始めたのが自分でもわかる。同時に、αの気配に反応して、体が濡れ始めた。 (最、悪……っ、こんな、醜態晒して――……)  何とかしないと!!  藍人本人は全身全霊もがいているつもりだが、はっきり言って多少体が揺れているだけだ。 「汗だくだな。とりあえず、ここじゃダメだ。俺の車で休ませるから」  聞いたことのある声だが、すでに藍人の頭はモヤがかかったように朦朧とし始めている。 (抑制剤、飲まなきゃまずいって――)  気持ちはじたばた。 「ほらほら、暴れんな暴れんな。大丈夫だから」  一応抵抗している風にはなっていたらしい。宥めるような声と共に、ぺしぺしと抱かれた背中を叩かれた。  何が大丈夫だ。  仕事もしないうちに、突発のHeat起こしてα感じて醜態晒して、こんなの冗談じゃない! 「あの、いいんですか颯さん?」 「勝手に他人の二次性晒し上げてんじゃねえよ」  え、と相手は慌てたようだった 「いいよ。俺んとこが今一番冷えてんだろ。あー、早崎」 「あいー」 「しばらくこの子中で休ませるから」 「へいへい。どうせ中にいんの響ちゃんだけでしょ」 「で」 「まだあんの?」 「後でKEN、俺んとこよこせ」  低く、凍りつくようなそれに、マネージャーは身震いをした。  やべーぞ、KENーJ。何やらかした?? 「言っとく。……響ちゃーん、3時間くらい、ちょいそこのホテルのスイーツビュッフェ行ってきてー」  マネージャーの一声で、大型のバンの中からはピョコりと綺麗系女子が顔を出した。 「経費で上げとくからさ」 「やったー。颯ちゃんも行く?」 「颯は、車で別の用事があんの」 「へーい」 「はい、退け退け」  何かを抱えた長身モデルが身を屈めてバンの中へ入っていくと、一瞬周りはしん、と静まり返ったが、すぐに何もなかったように現場は動き始めた。 「そっちのそれ、先に入れちまって」 「あ、そっち数足りねえ」 「さ、ってと。おい。生きてる?」  冷えたバンに乗り込み、中からロックをかけると、葉刈は腕に抱いていた汗だくの細い体をそっとシートに横たえた。 「う、っ」  ガタガタと体を震わせ、明らかに濃すぎるフェロモンの香りをぶちまけている目の前のΩに、葉刈はふと目を細めた。 「……あれ、お前」  どこかで見たことがあるような。 「う……」
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