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★ ★  窓の外側についている扉を開けると、星が(またた)いていた。涼しげな風が部屋に入り込んでくる。  寝台で眠るトールの傍らに戻り、愛おしいその寝顔を眺める。髪を撫で、額に口づけを施しても、彼は目覚めない。恐らく、朝まで起きないだろう。 「酷なことをしたな。長旅で疲れたろうに」  優しく言葉をかける。 「でも……お前を前にしたら、我慢できなかった」    外から虫の()が聞こえるくらいで、他には人の気配もしない。  ーー二人だけの世界だった。  今度こそ、何の枷もなく、二人だけで暮らせることの幸せを噛み締めた。 ★ ★ 「それにしてもーー」  自分の頭。そして、尻の辺りを撫でる。 「何だったんだ、あれは」  トールと睦み始めてから、突然耳と尻尾が現れた。尻尾は元々の獅子のものより細長く、自由自在に伸び操れる。 「彼奴(あいつ)だな」  思い当たる者の顔を思い浮かべた。 「俺を別の場所に飛ばしただけじゃなく、変な呪詛をかけたらしい」 「なかなか面白い趣向だろう?」 「何?!」  姿はないのに、天から声が降ってきた。 「お前、どういうつもりだ」  声の主は、前世からの因縁のある『神』。しかも『お前』呼ばわりだった。しかし、相手も気にする様子はない。 「お前も、だいぶお楽しみじゃなかったか?」 「そんなことは……いや、あるけど」 「だろ?」 「いつか解けるんだろうな?」 「さて、どうだろう。すぐに解けるかもしれないし、一生解けないかもしれないなあ」 「なんだって?!」 「まあまあ、せいぜい楽しめばいいじゃあないか」 「っていうか、お前覗いていたな。この助平やろーっっ」 「あははははははははは」  その高笑いを最後に、再び静寂が訪れた。  そんな二人のやり取りにも目覚めることなく、トールは、楽しい夢の内ーーーー。                        ♡おしまい♡
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