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ー6
寝室には運ばれたが、実は陽が射し込んでいて明るい。トールが何か言いだす前に、イオは二か所ある窓の両方とも、外側の扉を閉めた。それから、寝台の傍らの低い衣装棚の上にあるランプに火を灯した。
ぼんやりと二人の姿が浮かびあがった。
寝台の上にトールを寝かせたまま、イオは部屋を出て行った。
「イオ……」
文句ばかり言うから嫌になったんだろうかと、少し不安になる。
いやなわけじゃないんだ。ただ……。
こういうことは、あの日一度切り。前の世を合わせても、たった二度。
ーーといっても、あの日は、何度も何度も……。
あの時の様々なことを思いだして、恥ずかしくなり、考えるのをやめた。
扉が開き、何かを手にしてイオが戻って来た。液体の入った小瓶だった。それを衣装棚の上に置いた。
「なに?」
「木の実を絞って作った油だ」
「油? 料理に使う?」
「まぁ……本来は」
益々不思議になる。
「もう、俺には神の力はないからなぁ」
脈絡もない言葉に、とりあえず「うん」と相槌を打つ。
「そのままだと、痛みを伴う」
「そのまま?」
訳がわからないと思っていると、シーツと尻の間に手が忍び込んでくる。
「俺のをここに入れる時だ」
「え……」
先程もちらっと思いだしていた、あの日のことがまた脳裏に浮かんできた。それと同時にあの時の感覚までが甦ってくる。
あの……今までに感じたことのない……。
まだ何もされていないのに、身体が騒ついてくる。
「花嫁……今日が初夜だ……優しくする」
また……そんなこと。
花嫁じゃないし……。
夜でもないし……。
口には出さず、頭のなかでふわふわ考える。とてつもなく甘い雰囲気のなかに呑まれていく。
「そこを舐めて、この油でゆっくり解す……痛みを感じないくらいに」
想像しただけで頭がかっとなった。
寝台の上に二人、向かいあって座る。
もう一度初めからというように、小さな口づけから始まる。ちゅっちゅっと、髪、額、頬、耳朶、項、全てに口づけの雨を降らせる。最後に、唇にもちゅっと小さな音を立てる。
一旦離れ、イオは上を脱いだ。鍛えられた逞しい胸や、割れた腹が露になる。
子どもの頃は、一緒に風呂に入っていた。でもいつの日か羞恥を覚え、共にしなくなった。時折着替えの瞬間に出会した時など、妙にどきどきしてしまったのを覚えている。
今はそれ以上にときめいている。
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