2人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前なんか大嫌いだ。大嫌いだ」
次の日、そんな怒声で僕は起きた。あの少年だ。変わらず今にも僕の首を締めてやるという殺意の籠った視線を熱烈に浴びている。
この子にこんなに恨まれるようなことした覚えはないんだけど。
意味もわからず向けられる殺意とはいいものではないことは確かだ。正直居心地が悪い。
「ぐっ!」
首元に少年の手が伸びて、僕は首を締められた!
本当に締めやがった!!
このままでは窒息死してしまう。こんな死に方はごめんだ!しかし抵抗する手段がない。泣き叫ぼうにも首を締められていて何もできない!!
意識が……飛ぶ…………。
パンっと鋭い音が響いた。
「げほっ……ごほっ…………」
助かったようだ。荒れている息を整えながら涙で霞む視界をフル稼働させると、小年が艦長に頰を叩かれたようだった。
「な、なんで俺を叩くんだよ!」
「貴様が私の逆鱗に触れたからだ。子供だと言っても私は容赦はしない」
…………は?
今の会話の内容だと、まるでノワール艦長は僕が大切だと言っているではないか。
いや、いや、いや!僕は信じないぞ。簡単には懐柔されないぞ!懐柔されるのはお前だ!
すっと艦長の手が伸びてきて、しっかりと胸元に抱き抱えられた。
「う…………うわあああん!!」
温もりを感じたからだろうか。死に直面したからだろうか。僕は艦長の胸で泣きじゃくってしまった。
な、何だよ……こんなことされたら少年よりも艦長のほうがマシだとか感じるじゃないか……!
大泣きしているとつられたのか少年も泣いていた。艦長は僕をあやすように優しく背中をさすった。
ううう……絶対に好きになんてならないんだからな!
鼻水を啜りながら僕は決意を新たにした。
最初のコメントを投稿しよう!