第1話 産声

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第1話 産声

「死に損なったのか」 初めに耳にした言葉は僕の心に深く刺さった。すっと伸びてきた手は僕を抱き抱えた。 初声のような、赤ちゃんが泣いている声が聞こえる。 僕と同じで巻き込まれた赤ちゃんが泣いているのだろうか? 体が濡れている。状況が飲み込めない。掠れた視界を頼りにあたりを見回した。が、ほとんど何も見えなかった。見えたのはうっすらと、本当にうっすらと見慣れた髪色がたなびいたものだった。
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