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5・うわばみをやっつけろ
村人たちは、1週間ほどかけて、タバコのヤニと柿のシブを用意しました。
その量はもはや計り知れず、村の中にもうひとつ山ができたような格好となっておりました。
村人たちはそれを手桶に汲んだり、風呂敷に包んだり、手押し車やリヤカーに積んだり、軽トラックや2トン車、しまいにはヘリコプターなどに載せて、うわばみのほら穴へと運んでいきました。
日暮れ前にほら穴に着き、いの一番に前に出てきたのは、フロウガンでした。うわばみの化けた姿ではなく、本物のフロウガンです。
「この野郎、俺に化けてリルウをたぶらかしやがって! おめえみてえなうわばみなんか、今日までかき集めたこいつで、ぶっ殺してやるかんな! 覚悟しやがれ、この、くそったれトグロ野郎‼」
そう言い放ち、桶いっぱいのタバコのヤニと柿のシブを、ほら穴にぶち込もうとした、その時でした。
「やめてあげてよ! うわばみさんがかわいそうだよ!」
止めに入ったのは、ミリキアでした。インフルエンザの隔離期間が終わって、もう家の外に出られるようになっていたのです。
「なんでだよ! ここの山を越える人間が、食われたり、1晩待たされたりして、厄介な目に遭ってんだぞ。なんで同情しなきゃなんねえんだ?」
「うわばみさんだって、生き物なんだよ!? いくらあたしたち人間を食べちゃうからって、それって、うわばみさんがそうしないと生きていけないってことでしょ!? あたしたちだって、村のお米とか野菜がなくなったら、生きていけないもん。それと一緒だよ!」
「知るか、そんなもん!」
フロウガンは構わず、手桶の中身をほら穴にぶちまけました。
「ほらみんな! どんどんやっちまえ!」
フロウガンに続いて、村人たちも手に持った桶や風呂敷、そしてショベルカーやダンプカーなどの重機を使って、ほら穴をタバコのヤニと柿のシブで埋めてしまいました。
「あー……かわいそう」
ミリキアは汚くなったほら穴を前にして、泣き出してしまいました。
「バカ言ってんなよ。早く帰るぞ」
涙を拭かせる間もなく、村人たちに続いて、フロウガンはミリキアとともに村へと帰ってゆきました。
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