新しい仕事

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新しい仕事

 たぶん、あの日、あの場所にたどり着けたことは奇跡だったのだと思う。  人の目を避けるように、人のいない方へ進んでいった。どこをどう歩いたのか、今はもう覚えていない。  住宅街を進んだ先にゆるい坂道があって、そこを登り切った先に広がっていた、あの目に染みるような淡い秋桜(コスモス)の花畑。その中にたった一輪、穢れなく咲き誇る白い秋桜。  それはきっと、「奇跡」だったのだ。 「雪森(ゆきもり)美羽(みう)さん、こちらがハローワークの受付票です。お名前の漢字表記、読みはお間違いないですか?」  失業保険の申請と、これから仕事を探す手続きのために訪れた最寄りのハローワークで求人の検索の仕方を教わった。自分が何をしたいのか、これからどうしていきたいのかははっきりとした形をしていなかったけれど、求人を見ていると仕事をしなくてはという思いが湧いてくる。  胸の奥に、あの日見た白い秋桜が咲いているような気がした。この花が自分の心に咲いている限り、きっとうまくいく。美羽はなぜだかそんな気分になっていた。  そんな時、一つの求人が目にとまった。 株式会社ホワイトコスモス 職種:天使 仕事内容:奇跡を起こすお仕事です。陰ながらではありますが、人の幸せに繋がるお仕事です。対象に関する調査・分析を始め、企画から実行まで、チームで担当してもらいます。最初は天使見習いとして、先輩天使の補佐から始めてもらいますので、未経験の方でも安心して働けます。  胸の奥の白い秋桜が風に揺れたような気がした。気づくと美羽はハローワークに向かっていた。
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