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「はじめまして。雪森美羽です。よろしくお願いします」
株式会社ホワイトコスモスは、システム開発からコンサルティング、人材派遣業まで手広く行っている会社だった。子会社やグループ会社も多く、飲食や旅行、医療、教育と、できないことは無いのではないかというくらい多岐にわたる業界に携わっていた。
その中で、美羽が配属されたのは、企画営業部、天使課と呼ばれる部署だった。
「まずは二週間の研修を受けてもらいます。最初は奇跡チームの仕事を担当してもらう予定だから。何かわからないことがあればいつでも言ってね」
天使課の天音課長はとても綺麗な女性で、ふんわりとした雰囲気で優しい笑顔が特徴的だった。
天使課には十五名ほどの社員が在籍しており、いくつかのチームに分かれて仕事をしていた。大きく分けると奇跡を起こすチームと通称キューピットと呼ばれる、あらゆる人の縁をつなぐチームだった。
「今日からは奇跡チームの仕事を手伝ってもらいます。雪森さんには橘さんの補佐をお願いします。橘さん、今いいかしら?」
「はい……」
天音課長に呼ばれて現れたのは、すらりと背の高い男の人だった。
「橘さん、こちら天使見習いの雪森さん。これから橘さんの補佐についてもらうので、仕事教えてあげてね」
「橘颯助です。よろしく、雪森さん」
少し色素の薄い瞳でまっすぐに美羽を見つめ、橘は儚げに微笑んだ。
「よろしくお願いします!」
勢いよく挨拶をすると、どこかで嗅いだような柔らかな香りがしたような気がした。
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