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side小鳥
車酔いしないように遠くを見るようにしていたら、煌牙の膝が私の膝にコツンと当たる。
何となく意図的に当てられたような気がして振り返ると、煌牙は私の太ももにスマホを置いた。
その画面を見てみると、盗聴器が仕掛けてあると書いてあった。
私はゾッとして、文の最後の方に書いてあった寝たフリを実行する事にする。
普通に怖い、私たちは西園寺様に見張られている。
盗聴器をしかけるなんて何考えてるんだろう。
西園寺様が見張っているのは限りなく私よね。
あの人の執念が怖い。
今日は本当に蓮様に近づかないようにしておこう。
そもそも、私みたいな一般人が近付ける状況にすらならないか。
無駄な心配なんてしない方がいい、ストレスは体に悪いからね。
私が寝たフリをしていると煌牙がいきなり手を繋いでくる。
一体何?何で手を繋ぐの?もしかして逃げる準備とかしてる?まさか走行中の車から飛び降りたりしないよね?
不安だけどシーンとした車内だし聞くに聞けない。
そこから30分、私はいつ飛び降りるのかとドキドキしながら寝たフリをしていた。
それなのに車はあっさりと停車して、普通に降りて、普通に私たちの前から去って行ったのだった。
「…………。」
え???
何で?何で??
何で手繋いでたの??
私は訳が分からず煌牙を見上げた。
「あ…あの、煌牙?」
「ん?」
何なら今も繋いでるのよね、手。
「何で…手を、繋いでいるのかな、って…。」
私が戸惑い途切れ途切れに発すると煌牙はほんの少しだけ首を傾げた。
「手くらい繋ぐだろ、恋人なら。」
恋人でふと思い出した、そうよ私と煌牙はこのパーティーが終わるまでは恋人って設定だ。
西園寺様をこれでもかと言うくらい騙さないと。
そんな私を見て蓮様だって嫌気がさすはずよ。
尻軽だと思われたっていい。
離れるなら今しかない、今ならまだ間に合う。
「隊長、今日パーティーなんで腰に手回した方がいいんじゃないですか?」
「後もう少し柔らかい表情の方がいいですよ、白狼さん。恋人なんですから。」
昴くんと千夏さんに言われて煌牙は何の躊躇いもなく私の腰に手を回しエスコートし始める。
この男、手慣れてる…。
「柔らかい表情…?」
でもこっちは苦手みたい。
「そのままでいいよ、私がアホみたいにニコニコして中和してあげる。」
私がわざとヘラっと笑うと、ほんの少しだけ煌牙の表情が柔らかくなった気がした。
やっぱり、笑顔を引き出すには笑顔が一番よね。
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