天使さま

　やり方はさっきも言ったけど、こっくりさんとほとんど同じ。紙に五十音と数字と、『はい』と『いいえ』って書く。
　でも呼ぶのは天使さまだから。だから『はい』と『いいえ』の間に描くのは鳥居じゃなくて……。
　っていうかおじさん、こっくりさん知ってる？　やったことある？　ないの？
　え？　エンジェルさん？　知らない。そういうのもあるの？
　エンジェルの意味くらい知ってるよ。でもそれとは違うと思う。あたしたちのは『天使さま』だもん。っていうか、おじさん、人の話きく気あるの。話の腰を折らないでくれない？

　それでー、あと用意するのはコイン。十円玉とかでいいんだけど、このとき使ったのは十円玉じゃなくて、リカちゃんが持ってきてたコインを使った。
　リカちゃんが昔、お父さんからもらったんだって。外国のコイン。十円玉よりずっと綺麗だったし、ふさわしい気がしたわ。だって、せっかく天使さまを喚ぶのに、十円玉じゃあね。
　――ほら、これよ。リカちゃん、置いたまま帰っちゃったから。その後、あんなことになって……それであたしが持ったままになっちゃってるの。リカちゃんが元気になったら返そうと思って。でも、もうダメかもしれないけど……。
　なんでもない。