天使さま

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 うん、天使さまはちゃんと来てくれたよ。すごくドキドキした。あたしたちは神聖な気持ちで、うやうやしく天使さまをお迎えした。  それで、リカちゃんが質問をしたの。リカちゃんのために、天使さまを喚び出したんだもんね。  リカちゃんの質問は、あたしたちにはよくわからないことだった。でもはしなかったわ。それがルールだもん。  もちろん、天使さまはリカちゃんの質問に答えてくれた。  でも……。  リカちゃん、すごくショックを受けたみたい。答えをきいた後、なんだかぼーっとして、ランドセル持って、ふらふらって教室を出ていっちゃった。  びっくりして、あたし慌てて追いかけたんだけど、リカちゃんはそのまま帰っちゃった。  心配だったけど、教室に残ったマナミのことも気になったから戻ったの。それに、天使さまをちゃんとおかえししないといけなかったから。  教室に戻ったら、マナミが泣いてた。どうしたのって聞いたら、先生に怒られたっていうの。小峰先生に。  小峰先生、知ってるでしょ。ショートカットの女の先生。あたしたちが三年生のときの、担任の先生よ。あたしがリカちゃんを追いかけて教室を出たすぐ後に、小峰先生が入ってきたんだって。  「何してるの」って聞かれて、マナミは最初はごまかそうとしたらしいんだけど、嘘つけない子だから……。それに小峰先生だったら、大丈夫だと思って、『天使さま』のこと話しちゃったんだって。  そしたら先生に怒られたって。放課後の教室に残って、そんなわけのわからない遊びをするなんてって。どんなことをきいたのかとか、なんか根掘り葉掘りきかれたみたい。マナミは怖くって、全部話しちゃったのね。リカちゃんが『天使さま』に質問したことも。  それをきいて、小峰先生はぷいっと教室を出ていっちゃったんだって。マナミ、かわいそうだった。あたし、小峰先生を見損なったわ。そんなに怒るなんて、ひどいって。  リカちゃんと仲の良い先生だったの、小峰先生。  っていうか、あの人がリカちゃんを気に入ってたって感じ。周りからって言われたこともあるくらい。だから、リカちゃんはちょっと迷惑がってた。  そういえば、小峰先生ったら、学校休んでるみたい。病気らしいよ。職員室に行ったとき、先生たちがそんな話をしていたの。どうしたんだろうね。  え? リカちゃんがなにをきいたか? なんでおじさんにそんなこと言わなくちゃいけないの。  リカちゃんが最近落ち込んでるのは気づいてたけど、あたし、なにもしてあげられなかった。  ……リカちゃんはね、苦しんでいたのよ。ひとりで……。リカちゃんのお母さんにも、あたしたちにも、誰にも言えずに……。  だから、リカちゃんは『天使さま』をやろうって言ったんだわ。確かめたかったのかもしれない。  あたし、そのときはわからなかった。でも今はわかってるの。なにもかも。
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