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「いいじゃん、別に。ターゲットみんなクズなのは確かなんだから。難しいこと考えるのはやめようよ」
カウンター前のスツールに座り、遊園地のコーヒーカップのようにくるくると回りながら言ったのはティナ。今は白いTシャツにデニムというシンプルな格好だが、小脇にこれから身につける衣装を抱えている。動きを止めストンとフロアに降りると、セミロングの黒髪が揺れた。それに合わせたようにウインクする。
彼女の言動に皆が「ふっ」と笑う。
「クズか……」
カウンターの奥にいたリュウが目を伏せた。
「どうしたの?」
ティナが覗き込むようにする。
「いや、なんでもないよ。そうだな、俺達はただ、ゴミクズの掃除をするだけさ」
首を振りながらリュウが言う。革製のヘッドバンドとベスト、そして、若いが思慮深そうな表情は一見ネイティブ・アメリカンの青年を思わせた。
「いいね、その言い方」フェルムが笑う。「じゃあ、さっそく掃除を始めようぜ」
全員がセオを見る。
彼が頷いたのを合図にしたかのように、灯りが消えた。
そして、バーには誰もいなくなった――。
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