27人が本棚に入れています
本棚に追加
6
「カナダからのルート? そいつは確かなのか?」
横浜青龍会主要幹部の一人、荒武辰が目つきを鋭くした。
「ああ、そうだよ」ふふんとニヤけながら応える谷口。「間違いない。ウエイン・ローガン、っていう外交官が特権を使って持ち込んでいるんだ」
「それを、徳松のヤツが派手に売りまわってやがるんだな……」
苦々しい表情で吐き捨てるように言ったのは、浜熊組――表向きは東洋興行カンパニーと名乗っている――で違法薬物関連を一手に取り仕切っている幹部、野田洋平。
最近横浜を中心に『Eh』と呼ばれる上物の麻薬が多く出まわっており、それを取り仕切っているのが徳松の組織だろう思われていた。ただ、どこからどう仕入れているのか不明で、競合しているこの2つの組織としては忸怩たる思いをしていたのだ。
「そういうことだけど、おそらくもう一人噛んでいる人間がいる」
そう言って意味ありげに2人を順番に見る谷口。
「誰だそれは?」
いったん荒と目配せをし合ってから、野田が鋭く質問した。
「具体的にはまだわからない。ただ、警察の上の方にいるヤツだ。あれだけ派手に流通させているのを、警察が掴んでいないはずはない。ローガンの外交特権があるとはいえ、何のアクションも示さないのはおかしいよ。圧力をかけているんだ」
「ちっ! 徳松のヤツ、ずいぶん狡賢く立ちまわったもんだ。外交官や警察官僚を抱き込むとは……」
苦々しそうに言ってからグラスの紹興酒をあおる荒。
ここは彼が経営者となっている高級中華料理店だ。密談を行うときによく使う。
「俺達としては、徳松だけ排除してローガンとその警察の何者かはそっくりそのまま利用したいものだが……」
「そんなに都合よくいくのかい?」
野田の話に口を挟み、ビールをグビッと飲み干す谷口。
「いや」と首を振る野田。「とにかく一回潰す。徳松とローガンには消えてもらうさ。警察官僚の方は動き次第だ。できれば敵対したくないが面倒になりそうなら消す。そいつが誰なのか、突き止められるのか?」
「努力しよう。その代わり、情報料は高いぜ?」
得意げに笑いながら応える谷口。
最初のコメントを投稿しよう!