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「優秀なジャーナリストだったあんたが、俺達にとってこんな協力者になるとはな」
皮肉を込めるように荒が言う。
以前は裏社会の問題に切り込み、彼らの悪事を雑誌やネットで表に出すことが谷口のジャーナリストとしての姿勢だった。それが今や、荒や野田の組織にとって有益な情報屋となっている。
元々は青龍会と浜熊組も緊張関係にあった。シマは違うがいつどちらに喰い込んでいくかわからない。そんなところに、正体不明のグループがEhを流し始め、急激に勢力を拡大していた。どちらのシマも荒らされ、組織としての沽券に関わる状態だった。
そこへ谷口が接触した。有益な情報をいくつも持っている。それを元に調べ上げてやるから、協力し合って潰せばいいじゃないか、と。
俺も、もう若くない。危険な取材、体を張った調査なんかはやめたいんだ。どこかの顧問みたいな立場になれば楽だしな。あんた達に有益な情報を持ってきて、紙面では良いように書く。邪魔になるような団体や目障りな企業なんかがあれば、叩いてもいい。どうだ、俺を使ってくれないか?
……谷口はそんな売り込みをしてとり入ったのだ。
彼のネットワークには、政府や警察組織、主要経済団体等に深く喰い込んでいる者もいる。そこから流れてくる情報は、連中にとって充分旨味があることだろう。
「次にEhが運び込まれる日程と場所は掴んだ。どうするかは、あんた達で決めてくれ」
谷口がそう言うと、2人は鋭い眼光をぶつけ合う。
「徳松を潰す」
「ああ。そこは協力し合おうじゃないか」
とりあえず当面の問題に関しては目星をつけた。荒と野田は、まずそれを片付けるつもりになったようだ。
今後どんな付き合いになるかは、わからないが……。
2人が頷き、グラスをぶつけ合う。
そんな光景を、ほくそ笑みながら谷口は眺めていた。
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