1/3
前へ
/42ページ
次へ

 深夜、横浜港――。  本牧ふ頭の端にある倉庫に、荷物が次々と運び込まれた。  カナダからの船便で届いた中で、ローガンが手配した物だ。  「今回はこれまでより大量です。いいんですよね?」  ニヤニヤしながら訊くローガン。  「ああ、大丈夫だ。Ehを欲しがる奴は今急増している。まだまだ、荒稼ぎできる」  徳松が応える。彼のそばには西脇裕吾と館山満。この2人は『Far East Agency』の中で特に荒事を受け持っている。徳松のボディガードでもあった。  彼らが荷を検めワゴン車に積み込む。  それを見つめるローガンと徳松.。  「金はいつも通りの口座に振り込む」  「Thank you」  そんな軽いやりとりをかわすと、徳松はすぐに目つきを変えた。そして素早く動きながら、顎でローガンを呼び込む。  2人はコンテナの陰に身を潜め、笑みをかわした。  次の瞬間、倉庫の入り口が荒っぽく開けられ、銃や大ぶりの刃物などを手にした男達が十数名突入してきた。  「徳松っ! 派手に商売しながら挨拶にも来なかったんだ。償いをしてもらうぞ」  「Ehはこっちでいただく。もう、おまえらの商売は終わりだ」  リーダー格らしい2人が怒鳴るように言った。  「あはははっ!」と大声で笑う徳松。「どうやら青龍会と浜熊組が手を組んだようだな。その声、聞いたことあるぞ。どっちも幹部だったな。名前は……佐山と、青龍会の方は金田だったかな? 肝心の荒と野田はどうした?」  「会わせてやるよ。おまえはさらっていくことになってる。抵抗するなら痛い目に遭うぞ。別に五体満足でとは言われてねえしな」  佐山らしい男が憎々しげな口調で応えた。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加