プロローグ

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 当然トラブルも発生するが、処理をするのは羽下達4人の仕事だ。  今回は、薬物の過剰摂取で死亡した女優の件で探りを入れてきたフリーのジャーナリストと、その男に情報提供をし警察にも相談に行こうとした別の女優2人を始末させた。  ジャーナリストの男は行方不明となった。実際は海の底に沈んでいる。女優2人は羽下達が(さら)い、レイプしたうえで薬漬けにし、海外へ売った。それほど知られていない女優が消えたところで、世間ではどうということもないだろう。一瞬騒ぎが起こったとしてもすぐに静かになる。  「警察の方は大丈夫なんだろうな?」  羽下が念を押すように訊く。  「そっちもいつも通りだ。お偉いさん何人かに女と金を提供することでもみ消させた」  ふふん、と笑う津賀。警視庁にも神奈川県警にも、甘い汁を吸わせている協力者はいる。  遠山が裏事業を展開し、面倒ごとが発生したら羽下達が処理を行う。その後ろ盾として津賀がどっしりと構えている。見事な裏の分担業務といったところだろう。  「一段落ってことか。じゃあ、約束通り頼むよ」  羽下がニヤリとする。  頷いた遠山が、真新しいテーブルにボストンバッグを置いた。  今回の仕事の報酬は、金の代わりに麻薬――最近出まわり始めた上物でEh(エイ)と呼ばれている――で渡すことになっていた。羽下達は改装後のレストランを主に利用し、深夜、ギャンブルや薬物売買も行うつもりだったのだ。  「こいつで何人、ヤク中にしてやろうか?」  「で、若くて見た目が良いヤツは海外へ売ろうぜ。そういう日本人は売れ筋だからな。女でも男でも」  羽下と蒲田が目を合わせながらニヤリとする。村山と阿川も愉快そうだ。  「その手の連中は、俺が仕入れてきてやるよ。芽が出なくて藻掻いているタレントやアイドル、芸人は腐るほどいる。俺が声をかければついてくる」  遠山が得意げに笑う。
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