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「わぁ、ありがとう」嬉しそうに笑うティナ。「でも刑事じゃないの。そうだなぁ、探偵助手、っていうことにしておこうかな? あ、これが探偵さん」
横に来たリュウを手で示しながら、ティナが応えた。
「これ、って言うなよな……」
肩を竦めるリュウ。彼はいつもの恰好――Tシャツにデニム、皮製のベストとヘッドバンド――で、とても探偵には見えないが……。
「へえ、なんか似たような感じの刑事のコンビ知ってるよ。女の子の方がすごく可愛くて、可憐な花って呼ばれてる」
男性が2人を見比べながら言った。
「そんな女性刑事なら、会ってみたいな」
リュウが笑みを浮かべると、なぜかティナがムッとして脇腹に肘打ちをする。
「痛てっ!」と顔を顰めてから男性に向き直るリュウ。「すいません、突然声かけられて驚いたでしょう? お話聞かせてもらっていいですか?」
「いいけど、何か調べてるんだ?」
「まあ、ちょっとこの辺の治安とか確認する依頼を受けていて。で、こいつが訊いたように、物騒なことって多いんですか?」
「こいつ、って言うなよな……」
今度はティナが横目で睨む。
「俺はここにはたまに来るくらいだけど、妙な噂はよく聞くよ。特にこの辺の倉庫は、海外からの荷物が多く運び込まれるらしい。もしかしたら、違法な薬とか武器とかも売買されているんじゃないか、って噂もある」
「そうですか。じゃあ、あまり近づかない方がいいですね」
大げさに怖がるような仕草でリュウが言う。そんな彼を呆れた表情をしながら見るティナ。ヘタな芝居、とでも思っているのか?
「ホームレス仲間の噂だけどね。ただ、確かに危険そうな連中がウロウロしたりもしてるなぁ……」
そこまで話していると、離れた場所から別のホームレスらしい男性が「おーい、気障男」と声をかけてきた。どうやらこの人はそう呼ばれているらしい。
「じゃあ、俺はもう行くけど、仕事頑張ってね」
彼はそう言いながら離れていった。途中振り返り、ティナに向かって手を振る。
「ありがとね~」と振り返すティナ。
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