27人が本棚に入れています
本棚に追加
「目立たないように気をつけろよ。また荒っぽいことが必要になる」
津賀が釘を刺すように言った。
「そしたらそれでまた、俺達が儲かるってわけだな。ハハハッ!」
羽下が愉快そうに声をあげた。
その時――。
「悪いなぁ……」
広い店内に、突然女性の声が響いてきた。
「誰だっ!?」
叫ぶように誰何する羽下。
彼の横に素早く移動し、凶暴な仲間3人が身構える。
「うふふ……。悪い人達には、罰を与えなきゃね?」
バックヤードへ通じるスイングドアが軽く開き、若い女が顔を出しながら言った。琉装というのか? カラフルな沖縄の民族衣装らしきものを着ている。こちらを覗き見る顔は美しい。
「誰だ、おまえは?」
羽下が更に問い詰める。
「ふふ……。誰でしょう?」
小首を傾げながらウインクすると、女はスッと身を退く。スイングドアが閉じた。
「捕まえろ」
指示を出す羽下。蒲田と村山、そして阿川が素早く動いた。
津賀と遠山が怪訝な表情で見ている。
「なかなかいい女だった。頭のイカレた売れない女優の変わったプロモか?」
遠山が下卑た笑みを浮かべる。
「かもな。だが、なんだか妙な空気だな……」
悪党特有の感覚がある。羽下は不穏な流れに巻き込まれたように感じたのか、顔を顰めた。
最初のコメントを投稿しよう!