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若い女――ティナは踊るようにくるくると回りながら、レストラン用什器や開店後には冷凍庫等が置かれるスペースへと向かっていた。琉装の裾や袖がひらひらと揺れる。その姿は蝶のようだ。
男達3人がものすごい勢いで追ってくる。
あっという間に奥まで来た。左に厨房へと通じる通路、右に裏口へ続くドアがある。しかし、それぞれを村山と阿川が塞ぐように立ち、ティナは行き場を失った。
前からは蒲田が迫ってくる。
「もう逃げられねぇぞ、小娘。おとなしくこっちへ来いよ」
「こいつ、可愛いじゃん。もしかしてアイドル志望? こんな形で売り込みかよ?」
村山と阿川がニヤニヤしながら言った。
「アイドルかぁ……。なれるもんならなりたいけど、私、無理なんだよなぁ」
相変わらず笑顔を浮かべながら応えるティナ。
「相談に乗ってやってもいいぜ? ていうか、俺らの話を聞かれたからには、もう後戻りはできないよ」
蒲田がティナの体をなめるように見ながら迫る。そして、彼女の手首を掴もうとした。
ヒラリと躱すティナ。後ろから阿川が取り抑えようとするが、その腕をするりとくぐり抜け、バレリーナのように回りながらジャンプする。次の瞬間、素早く右足を上げ阿川の横っ面を蹴りつけた。
「ぐわっ!」と叫び倒れる阿川。
ティナは着地すると同時にウインクする。
「この小娘……」
ヨロヨロとしながらも、阿川が立ち上がる。
「ちょっとお仕置きが必要だな」
蒲田の目が残忍そうに光る。
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