プロローグ

6/10
前へ
/54ページ
次へ
 若い女――ティナは踊るようにくるくると回りながら、レストラン用什器や開店後には冷凍庫等が置かれるスペースへと向かっていた。琉装の裾や袖がひらひらと揺れる。その姿は蝶のようだ。  男達3人がものすごい勢いで追ってくる。  あっという間に奥まで来た。左に厨房へと通じる通路、右に裏口へ続くドアがある。しかし、それぞれを村山と阿川が塞ぐように立ち、ティナは行き場を失った。  前からは蒲田が迫ってくる。  「もう逃げられねぇぞ、小娘。おとなしくこっちへ来いよ」  「こいつ、可愛いじゃん。もしかしてアイドル志望? こんな形で売り込みかよ?」  村山と阿川がニヤニヤしながら言った。  「アイドルかぁ……。なれるもんならなりたいけど、私、無理なんだよなぁ」  相変わらず笑顔を浮かべながら応えるティナ。  「相談に乗ってやってもいいぜ? ていうか、俺らの話を聞かれたからには、もう後戻りはできないよ」  蒲田がティナの体をなめるように見ながら迫る。そして、彼女の手首を掴もうとした。  ヒラリと躱すティナ。後ろから阿川が取り抑えようとするが、その腕をするりとくぐり抜け、バレリーナのように回りながらジャンプする。次の瞬間、素早く右足を上げ阿川の横っ面を蹴りつけた。  「ぐわっ!」と叫び倒れる阿川。  ティナは着地すると同時にウインクする。  「この小娘……」  ヨロヨロとしながらも、阿川が立ち上がる。  「ちょっとお仕置きが必要だな」  蒲田の目が残忍そうに光る。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加