神さまのメッセージ

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 あたし、真面目な顔になって言ったわ。 「そうね、あなた人を殺すの、向いてないよ、やさしいから。」 「でもね、」  彼、とっても悲しそうな顔をしたの。 「バスケのチームメイトみたいな戦友たちが、敵にやられそうになったら。ぼくだって、どうなってしまうか。」  仕方ない。あたしは頷くしかなかった、みんなを守るために。  生まれてくるエンジェルのパパの手を、赤い色で染めたくないもの。  徴兵の検査の方法は地方によっていろいろ違うみたい。あたしたちの住む地域での内科の基本診断は「尿検査」なんだって。彼が調べてきた。  彼の徴兵検査の日の朝、バスルームで彼と二人、病院で捨てられた点滴用のビニールのパックを工夫して、無理やりあたしのおしっこを詰め込んだ。  ああ、思い出したくもないけど。  彼はビニールパックを手にすると内股に貼り付けて、意気揚々とあたしのおでこにキスしてくれたわ。 「万事OK。外見は健康そうだけど、中身は重度の糖尿病。これだったら、僕が合格することは絶対にないよ。」  そう、あたしは重度の糖尿病だったの、入院してたくらい。今は退院してひと月一回の通院になってるけど、それでもまだ血糖値は尋常じゃない。  その日の夕方、検査から帰ってきた彼は上機嫌だったわ。 「尿検査、トイレで上手く紙コップに入れられたよ。不合格間違いなし。」  勿論、その日はそのまま二人で上機嫌な夜を過したわ。  検査の結果が出る日、彼は徴兵事務所に呼び出されたの。 「きっと、不合格だからだよ」ってニコニコしながら出て行った。  その日の夕暮れ。彼は眼の周りに青あざをつくって帰って来た。  来週早々、戦地に飛ばされることになったって。それも、テレビで激戦地だって報道してた地域。  なんで、どうしてなの。  何か検査官の気に障ったの。学生時代の恋仇だったとか。  彼はこんなときでもにっこり笑える人。 「ハニー、喜んでいいんだ。ぼくたちの天使からのメールだよ。」  外形だけじゃあ分かりにくい時代、男性女性、同じような検査内容もあったんだって。 「『お前、尿検査で妊娠してるって出たぞ』って陸軍の士官から言われたよ。  ちょっとお目玉食らったけどね。」  神さまからのやさしいメッセージが、その天使のパパを人殺しの戦地へ送ってしまう切符となってしまった。  あたしたち、住んでる。とっても素敵だけれど、とっても残酷なこの世界に。
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