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数日後、うなづき様特集の図書だよりを提出しに職員室を訪れた僕に、杉原先生が言った。
「一組の学級委員について、担任の先生から相談があったの」
「はあ」
「凌一くん、やってみない?」
「僕が?」
「図書委員のお仕事、誰よりも真面目に丁寧に取り組んでくれているよね」
「僕は、本が好きですから」
杉原先生は、うんうんと頷く。
「どうかな、図書委員会で培った力を、違うところでも発揮してみない?」
学級委員なんて考えたこともなかった。でも、クラス皆から頼られて、そのことに胸を張って行動する、上尾さんのような人に憧れなかったわけではない。
僕にも、そんな素質があるのだろうか。挑戦してみてもいいだろうか。
そう問いかけるように、僕は自分の胸元に視線を落とした。
「……いえ」
顔を上げた僕は、杉原先生の目を真っ直ぐ見つめ返して答えた。
「僕は、このまま図書委員として頑張ります」
図書委員の仕事が好きだ。大好きな本と共に過ごせる時間が一番多い仕事だ。この楽しい時間を、安全な場所を、わざわざ手放す必要はない。そのことに気が付かず、安易な判断をしてしまうところだった。
僕の胸にぶら下がるうなづき様が、ゆっくり首を横に振ったのだ。
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