2人が本棚に入れています
本棚に追加
ピアニッシモの岸辺に
彼は覚えてるだろうか?
私が、彼に伝えようとしたことを。
それはきっと、風が通り過ぎるよりも速く、街の中心を駆け抜けた。
それは言葉なんかじゃなかった。
言葉よりもずっと、——確かなこと。
それでいて…
私たちがすれ違える時間は、もう、どこにもない。
何年経っても、それは変わることなく続いていく。
いつかまた、出会える日が来ること。
それをどれだけ待ち望んでも、もう届かないんだってこと。
ねえ、知ってる?
ピアニストになろうと夢見た日、キミが、隣にいたって。
キミのようになりたいと思ってた。
キミのように、真っ直ぐ何かに向き合える人になりたかった。
追いかけていたかったんだ。
指の先に触れる音律。
その切先に触れる、——何かを。
最初のコメントを投稿しよう!