—序章

1/1
前へ
/28ページ
次へ

—序章

ある町から逃げるように、簡単な荷物を背負って出ていく剣を帯びた女傭兵がいた。 「ちくしょう……なんであたしが追い出されなきゃいけないんだ。金もたいして残っちゃいないし、野垂れ死にだなんて冗談じゃない!」 「もう違う国に行って金を稼ぐしかない…まともな生活ができるまでは、強盗でもなんでもしてやるさ」 「そんなことを言わないで」と、心の中から優しい声がする。それに対して彼女は「チッ」と舌打ちをし、無視を決め込んで歩き続けた。 一週間前… 大悪魔とその軍勢が首都の王城にまで侵攻していた。大悪魔の目的は、聖王国の王と自分たちの天敵となる聖女を抹殺し、国を支配すること。 聖女の護衛たちは次々に倒れ、聖女は強力な聖なる魔法を行使しようとしたが、大悪魔に致命傷を与えることができない。人質を取られた聖女は攻撃ができず、腹を貫かれてしまう。 とどめの一撃が振り下ろされる寸前、防御結界を張り、一撃を防ぐことができたが、その反動で床が抜け落ちた。 はるか下にいた女傭兵に崩れた床が降り注ぎ、運悪く半身が埋もれてしまう。 瀕死の状態に陥った女傭兵と聖女。女傭兵の姿を見た聖女は罪悪感に苛まれ、なんとか這いつくばって女傭兵に近づき、手を握って禁忌とされている魔法を使い融合を果たした。 二人が融合したことにより、身体の損傷は回復したが、直後に大悪魔に発見される。すぐに臨戦態勢に入り戦い始めるも、融合して女魔法剣士となった彼女(達)の攻撃では聖女であった時と同様に大悪魔に傷を負わせることができなかった。 そのとき、聖女の心の声が響く。 「大悪魔の傷口に剣を差し込んで」 突然の声に戸惑いながらも策が思いつかず、思い切って大悪魔の胸の傷口に剣を突き立てる。しかし、わずかに痛がる様子を見せるものの、致命傷にはならない。 そのとき、自分の体から聖なる力が溢れ出すのを感じる。 「ホーリースマイト!」 輝く刀身から光があふれ、彼女の体全体を包み込む。その光は大悪魔に行き渡り、絶叫を上げながら大悪魔は灰となって消え去った。 聖なる一撃は、そのまま地平線の彼方へと飛んでいった―― 大悪魔の消滅を感じ取った魔族や蛮族たちは、我先にと一斉に撤退していく。こうして、最悪の大悪魔の侵攻は終わりを告げた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加