分かりやすい日本語

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 お母さんが生きていた頃、お役所や病院で『口話(こうわ)(唇の動きで相手の言葉を読み取る)』による会話を目にする機会が多くありましたけど、その時に気になる事が幾つかあったので、ここに書き記したいと思います。  手話教室の先生が、聾者と『口話』や『筆談』で会話をする時の注意点としてよく仰るのは。 『(分かりやすい日本語)や(簡単な日本語)を使うように気を付けましょう』  って事なんですよね。  でも、これって聞こえる人達にとっては『凄く勘違いしやすい事』なんじゃないかなぁ~って……。  先生は「日本語を全く知らない外国の人に話すように……そう心掛けていれば、どんな言葉を使えばいいのか分かりやすいでしょう」って説明をしますけど、それでも勘違いをする人が減ったようには思えませんでした。  この説明を聞いた多くの人は、『お口を大きく開け』『活舌の良い大きな声で』『ゆっくりと話す』を心がけるのですが……ただ、それだけで、本当の意味での(分かりやすい日本語)を理解していないように思えてなりません……。  例えば……。 ①「方言を標準語だと思ってる」  これはすっっっっっごく多い気がします。  普段の日常会話で通じてる言葉だから、それが『特定の地域でしか通じない単語』だなんて気付かない人の方が多いのかも知れません。  極端な話。 「えりゃぁ~はすかいなっとるだでかんわぁ~~、いざらかすの、てつどぉ~てちょ~~」  なんて言葉、どれだけゆっくりと、大きな口を開けて丁寧に話されても、その地域以外の人には分からないんですよ。 ②「幼児言葉になる」  (分かりやすい日本語)を(子供が話す日本語)だと思ってるのかもしれませんけど、耳が聞こえないお母さんの耳元で 「これはぁ~、〇〇なんですよぉ~、分かりましたかぁ~~」  って、ゆっくり大声で話してる様子は、私の目には『小馬鹿にして煽ってる』ようにしか見えませんでした。  ただこれに関しては、普段何気なく話してる日本語の、何が難しくて、何が簡単で分かりやすいのか、その基準が分からないんだろうなぁって思ってました。  だって、頭の良いお医者様でも出来ていない事でしたから……。  お母さんに付き添って聞いてた時も、お医者様はゆっくり話してはくれましたけど 「この、サルコイドーシスの」 「????」 「え~……良性の肉芽腫の」 「????」  ……。  ……。  いつも後からGoogle先生に聞いて (体には害のないオデキのような物って説明してくれればいいのに……)  って思ってましたから。  要するに、聞こえる人の多くは、自分が普段話している日本語を基準にして、自分よりも幼い子供が使う『幼児言葉=簡単な日本語』、自分が普段使わない、理解できない『専門用語=難しい日本語』って認識なんじゃないでしょうか?  その勘違いを取り除かない限り、いつまで経っても聾者に伝わる『分かりやすい日本語』には辿り着けないような気がします。  では! 分かりやすい(簡単な)日本語とは何ぞやあぁぁ!  と言う訳で、私がお友達のママ達に説明してた事を書きますけど、所詮は小学生の小娘の考えなんですから、激しい突っ込みは無しにして下さいね。  私は基本的に、聞こえない人とお話をする時は日本手話を使っていましたけど、手話を話せない人や苦手な人とのお話は口話や筆談を使っていました。  その時の日本語は当然『分かりやすい日本語』ですが、それは大声やゆっくりではなく『言葉の意味を簡潔に』と言った意味合いでの『分かりやすい』を心掛けていました。  まだ抽象的過ぎて分かんねぇよぉ~……って仰るアナタ、慌てない慌てない。  じゃあ『意味が分かりやすい言葉』をどうやって選んでいるのか……。  それは文字の専門家さんが研究した事実とは違うかもしれないけど『文字が伝わる前の日本語を私なりに想像』して……。  ……。  ……。  って、話し終わる前に攻撃しないでぇ! ちゃんと順を追って説明しますから。  コホン……。  え~、むか~しむかし……。  それはもう『超』が百個は付くくらいの昔。  日本語は『音による話し言葉』だけで『文字』は無かったと言います。  実際に目の前にある物、目には見えないけど感じられる暑さや寒さなどの感覚、喜怒哀楽などの感情……その全てに名前を付け、日本語を作っていったのではないでしょうか。  例えば……。  生まれたばかりの小さい生き物は『こども』  まぁ~るいものは『たま』などなど……。  だから、羽のはえた生き物から生まれる『たま』のような『こども』は『たまご』と、意味を表す言葉だけの組み合わせで多くの言葉が作られたのだと思います。  そんな『音』だけの日本語を使っている国にやがて『漢字』と言う文字が伝えられます。  そして『たまご』を指さして「これは『卵』と言う漢字を使います」のように、一つ一つの言葉に該当する漢字を当てはめていったのではないでしょうか。  そこで初めて『卵』には「らん」と言う音読みが存在する事を知り、『たまごのしろみ=らんぱく』のような『音読みだけの組み合わせによる言葉』が出来たのでしょう。  つまり、今現在ある『音読みの組み合わせ単語』は全て、漢字と言う文字が伝わった後に出来た言葉であって、本来の『言葉の意味だけで構成された日本語ではない』、『意味が分かりにくい言葉』だとは考えられませんか?  だから『音読みの組み合わせ言葉』で作った文章……。 「卵白(らんぱく)卵黄(らんおう)分離(ぶんり)し、個々(ここ)撹拌(かくはん)する」  を例にするならば。 「玉子(たまご)白身(しろみ)黄身(きみ)()けて、それぞれを()()ぜる」  のような『訓読みの組み合わせ言葉』の文章が『文字が伝わる前の日本語』であって『分かりやすい(簡単な)日本語』だと思うんですけど、どうでしょうか?
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