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「こんな疫病神を産ませやがって! 神も仏もありゃしねえ!」
捨三の父親は、よくそう言って両手のない捨三を罵った。
捨三の母親は、子供を八人、産んだ。
八番目の捨三を産んで、その両手がないことに驚き、産後の肥立が良くなかった。
そして、まもなく死んだ。
捨三の実家は、貧しい農家だった。
捨三の兄弟は、みな農業の手伝いをしていた。
捨三は、その兄弟からもいじめられて育った。
捨三は、七つになったが、学校なんて行かせてもらえなかった。
自分の食い扶持ぐらいは働け、と両手のない捨三でもできる薪運びをさせられた。
背中に山のような薪を背負わされ、家まで持って戻る、、。
それが、捨三の生活の全てだった。
捨三は自分の名前すら書けなかった。
そんなある日。
捨三は、薪を背負って山を降り、一休みのために一本の松の木の下に来た。
そして、ふと、そばに落ちていた松の小枝を、口で拾った。
そして、深い意味もなく、家までの道中に祀られているお地蔵さまを、口で咥えた小枝で描いてみた。
最初はおぼつかなかった線も、次第にくっきりとしたものになった。
「坊主! 面白いものを描いておるな」
そう笑い声がして、振り向くと、ボロボロの袈裟を来たお坊さんが立っていた。
それが、了庵との出会いだった。
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