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1局目【勝利を伝えたい相手は少女?!】
対局後の、インタビュー会場。
「次は、トップとなりました東雲南雲選手へのインタビューです。……東雲選手。トップ、おめでとうございます」
俺は笑みを浮かべて、女性インタビュアーに「ありがとうございます」と答える。するとすぐに、彼女は嬉々としてインタビューを始めた。
「オーラス、ほんっとうに痺れました! まさか最後のツモ番で当たり牌を引けるなんて!」
「本当に、ツイていましたね。勿論希望は捨てていませんでしたが、でもまさかあの局面で本当に和了れるなんて。……ただただ、ツイていました」
などと、嬉しさを隠しきれずに応対すること数分。インタビュー終了目前で、その女性インタビュアーはこう言った。
「最下位からの劇的な逆転! この感動を今、誰に伝えたいですかっ?」
誰に。問われて、真っ先に思い付いた女の子の顔。
「いやぁ、ヤッパリ同じチームのメンバーと、ファンの皆様ですかねっ」
だが当然、その相手の名前は言えないので。俺は笑顔のまま、お決まりの言葉をサラリと回答した。
……いや、まぁ。実際問題【女の子】って言うのは、ちょっと違うかもな。
インタビューを終えて、チームメイトと勝利を喜び合い、対局会場から退出。マンションに向かいながら、俺はぼんやりと考える。
俺が麻雀の対局で勝って、勝利を伝えたい相手。それがいったい、誰なのか。……恥ずかしながら、答えはハッキリと決まっている。
「ただいまー」
それは、一人の女の子。
……ではなく、少々訂正。
「おかえり、南雲。晩ご飯、できているわよ」
──一人の【少女】だ。
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