変わらない日常で、2人は

2/7
前へ
/7ページ
次へ
 神や悪魔はよく対立していると思われがちだが、そうではない。共に生活するし、遊びもする。なんなら夫婦にもなるし、性別だって変えられる。  「はぁー、しくじったなぁ。」    かれこれ3時間、酒場のカウンターで管を巻いている天使がいる。飲んだカクテルは22杯。  「はぁー、ココのカクテルおいしいから、何杯でもいけちゃうのよね。しくじったなぁー。帰れないじゃーん。あ、次のお願い。トロピカルな感じで。」  「かしこまりました。」    まだ居座るつもりなのか、と内心思っているがバーテンダーの悪魔はまだ飲んでいない組み合わせで手早くカクテルを作る。  「はぁー、しくじったなぁ。」  「…当店の味を気に入って頂けたなら、提供する私としても嬉しい限りです。ですがそろそろ、お身体に障るのではないでしょうか?」  「やぁよ!まだ飲むし、悪魔くんと話したいの。」  カクテルを差し出しながらやんわりと「帰れ」と伝えたつもりだった。そして天使は正しくそれを理解したのだろう。カクテルを手に取り、それに口をつける前に舌をだしてべーッと顔をしかめた。  「…ではお話をお聞きしましょうか。と言っても、すでに同じ話を3回聞いておりますが。」  「えぇーそうだっけ?」  「合コンの話ですよね?」  「あら!なんで知ってるのー?」  悪魔はめまいがしそうだった。他の店員に代わってくれと目配せしているのに、誰もがすまないと顔にだしてこちらに近づこうともしない。気に入られてるのか、この天使は自分にしか酒を要求しない。他の店員には料理や簡単な賭博を要求するのに、だ。よほど自分の作るカクテルの味を気に入っているということなのか。それはそれで悪魔も悪い気はしなかった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加