砂糖の大冒険

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砂糖の大冒険

乗り物酔いする司ちゃんは突然言った。 「なあ、幸…旅をしないか?」 乗り物に乗れないくせにどの口が言うんだと突っ込んでみたら、歩いて行くという。方向音痴のくせに。 長崎街道シュガーロード。 長崎から北九州まで、ざっと57里、おおよそ228キロ。 司ちゃんは本気だ。 すやすや隣で寝ている司ちゃんの横顔をまじまじと見つめる。 一見、どこまで本気か分からないような人だけど、大抵のことは、本気だ。 しかも、実行できないことは言わないことを私は良く知ってる。 そして、司ちゃんはもみじの葉っぱよりも真っ赤な家計から私が実現させることを全く疑っていない。 何とかしましょう。 司ちゃんの鼻を摘まんだ。ぷはーっと口が開く。 「ふっ」 思わず間が抜けた寝顔が可愛くて笑ってしまった。 暗闇の中で携帯を開き、長崎街道シュガーロードと検索する。方向音痴の司ちゃんには任せてられない。へんな使命感が生まれる。そして、画面を指でスクロールしながらうなずく。帰りは絶対に電車に乗るぞ。司ちゃんが乗りもの酔いしようがしまいが関係ない。むりくり乗せる。 228キロの距離を目で追いながら静かに決心した。
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