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(司にとって、俺はいつまでも憎たらしい存在なのかな)
天井を見上げてぼうっとする。
司は俺が嫌いなはずだ。
それも、事故番になる前から。
どこか遠い世界に行こうとしていた俺の意識を引き戻したのは、千絢の「まま」という呼び声だった。
「おわったよ。たべようよ」
「あ、あぁ、そうだな」
食卓用の椅子に千絢と深知を座らせて、俺は二人の食事風景を眺める。
まだお世辞にもきれいとは言えない食べ方だけど、ゆっくりと教えていけばいい。
「まま、おいしい」
「そっか。ありがと」
二人の食事をサポートしつつ、たった一つ空いている椅子を見ると無性に寂しくなる。
(俺とお前が出会わなかったら、よかったのにな)
もしも出逢わなかったら――俺たちは事故で番になることもなく、司の人生も俺の人生も、交わることはなかった。
(けど、お前は嫌かもしれないけど、俺はお前に感謝してるんだよ)
深知と千絢と出逢えたことは、少なくとも俺にとって――大切なことだから。
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