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「被告人邪木実に対する殺人被告事件について、次のとおり判決を言い渡します。
主文。
被告人を死刑に処する。
この判決に不服があるときは十四日以内に控訴することができます。」
ああ、もう終わりだ終わり、どうしようもない。
私、老田不々美はこの日、人生最大の絶望を抱え、打ちひしがれていた。
話の中心である邪木実は、幼馴染みだ。今回、彼が事件の被疑者となったため、私は弁護士として法廷に立ったが、考え得る限りの最悪な結末になってしまった。
もう、彼は助からない。
首を括られるのも、決して遠くない未来だ。
彼が生きていないのであれば、私が生きる意味はない。
私も、死んでしまおうか・・・・・・
・・・・・・だが、死ぬのは怖い。
ここまで私が思いつめているというのに、彼は楽観的だ。
判決の数日後に、拘置所内で面会していたのだが、彼は死刑囚となった身とは思えないほど、元気溌剌としていた。
「いやいや大丈夫だって不々美~、まだ高裁もあるし、それが駄目でも最高裁まである。気楽に行こうよ。」
「でもでも! 控訴が受理されて判決までいく確率は30%未満、さらに判決が無罪に変わる確率は15%なんだよ⁉ 上告になると、さらに確率は低くなる・・・・・・ああ、もうダメだダメだダメだ・・・・・・」
再び精神が不安定になる私を、実君が宥めてくれる。
「落ち着けって。まだ0%じゃない。それなら十分希望があるじゃないか。」
「そもそも起訴されて無罪になる確率が、0.2%だけどね。」
「そう言うなって。大事なのは、俺の無罪が証明されることだ。不々美は、俺が殺人を犯したなんて、思ってないだろ?」
「それは・・・・・・そうだけど。」
実君は力強く頷く。
「なら、さっさと俺の無罪に繋がる証拠を持ってきて。」
「・・・・・・はあ、分かってるよ。」
私は、力なく立ち上がった。
私にそんなことできっこない。
それは・・・・・・分かっているはずなのに。
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