プロローグ

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実君との面会が終わり、私は改めて、事件現場に訪れる。 場所は、特に変哲もない、普通のワンルームマンション。 大学生や会社員、高齢者など、幅広い年代層が住む、比較的新しめのマンションだ。 被害者の姉川冥(あねがわめい)は、そこで刺殺体の姿で発見された。 この冥さんは、実君や私にとっても関係の深い人物、言うなれば姉貴分のような存在だった。 冥さんは、いつも口癖のように言っていた。 「いいか、実、不々美。人の命はたった一つだ。いつかは死が訪れ、終わりを迎える。それがまた、再び蘇ることはない。だからこそ、一度の人生悔いの残らぬよう、全力で楽しむんだ。」 ・・・・・・ 彼女の言葉は、私達の心に深く染みついていた。 そして事件の前夜も、実君と冥さんは一緒にいた。だからこそ、事件の被疑者として疑われ、起訴されたのだ。 遺体の第一発見者もまた、私達の知り合いだった。 物集女永好(もずめえいこう)。私や実君とも旧知の仲で、現在は都会の大学生だ。 彼はかなり、節操がない。 大学でかわいい女の子を見ては、すぐに声をかけ口説く性格だ。 冥さんも、その一人だった。 毎晩に渡り冥さんのマンションに通いつめ、自分の女にしようと必死になって言い寄っていた。 そしてついに先月、永好に対して、マンション出禁命令が下った。 すると何を思ったか永好は、冥さんの部屋に不法侵入して、嫌がらせをするようになった。 そしてその日も、イタズラするために部屋に上がると・・・・・・冥さんが刺されて亡くなっていたということだ。 いや、普通に考えて、永好が怪しすぎる。しかし、それを覆す決定的な証拠があった。 死亡推定時刻だ。 永好が部屋を訪れたのは、深夜2時。しかし、冥さんが亡くなったのは、それより三~四時間前と判明した。 そのさらに少し前までは、私と実君は冥さんの家にいた。そして、私だけ先に帰ったのだ。 つまり、犯行が可能であったのは、実君しかいない。防犯カメラの映像からも、その時間帯に誰か別の人物が出入りした痕跡もない。 そう、やはり状況は、詰んでいるのだ。 この事実を、ひっくり返そうなんて・・・・・・ やっぱ私には無理だよ無理。
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